森友学園への国有地売却を巡る問題が、再び国会の焦点となっている。
財務省前理財局長の佐川宣寿国税庁長官は学園との事前の価格交渉を否定し、交渉記録も「廃棄した」としてきたが、事前交渉をうかがわせる内部文書や音声データの存在が明らかになってきたからだ。
太田充理財局長は、参院予算委員会で、既に公開された5件の内部文書以外にも、土地売却に法令上の問題がないか対応を検討した新たな内部文書が存在することを明らかにし、確認を進め早急に開示する意向を示した。
これまでの政府答弁は虚偽だったのではないか、と誰もが疑う事態である。野党が佐川氏に国会に出て説明するよう求めるのは当然のことだ。与党側は拒んでいるが、それでは疑惑は深まる一方だろう。招致に応じ、これまでの答弁との整合性を説明するよう促すべきだ。
佐川氏が長官昇格以来、記者会見を一度も開かず、だんまりを決め込んでいるのも異常だ。
驚いたのは、就任時の記者会見を避けたことについて麻生太郎財務相が「適切な対応だった」と擁護し、「国税庁所管以外に関心が集まっていたから、実施しないと決めた」と衆院予算委員会で語ったことだ。森友問題の追及をかわすためと認めたようなものだ。
安倍晋三首相は、野党の更迭要求に「適材適所」だとしてかばい続けているが、それで国民が納得すると考えているなら、認識が甘すぎないか。
会計検査院が売却額について「十分な根拠が確認できない」との検査結果を出しても、「適正な価格」と繰り返してきた佐川氏は沈黙を続けている。
佐川氏は徴税の責任を担う国税庁のトップだ。確定申告の時期を控え、納税者に疑惑を抱かれたままでは、税金の意義を説くこともできまい。長官昇格は森友問題で政権を守った論功行賞だという見方もあり、国民の目は厳しい。
森友学園を巡っては、前理事長夫妻の詐欺事件とは別に、根本的な疑惑が積み残されている。
なぜ評価額9億5600万円の国有地が、ごみ撤去費用として8億円余りも値引きされ、学園に売却されたのか。安倍首相の妻、昭恵氏を名誉校長とする小学校用地だったこととの関係も含め、国民財産の処分が適正だったかが問われている。
国民への説明を避けて、疑惑は晴らせない。
[京都新聞 2018年02月03日掲載]
これから確定申告が始まる前にきちんと説明すべきだろう。