東京五輪・パラリンピックに絡む入札を巡り、大会組織委員会大会運営局の元次長、森泰夫容疑者(55)と広告大手「電通」元幹部の逸見(へんみ)晃治容疑者(55)ら4人が独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で逮捕された事件。広告業界が談合に問われるのは異例で、東京地検特捜部は発注側だった森容疑者を「中継地」とする「官民共同の談合」(検察幹部)が行われたとみて解明を進めている。(吉原実、桑波田仰太、石原颯)
「五輪のテスト大会関連の入札で、森容疑者に応札を辞退するよう言われた」
談合があったとする情報が特捜部にもたらされたのは、組織委元理事の高橋治之被告(78)=受託収賄罪で4回起訴=を巡る贈収賄事件で、贈賄側企業の一つだった広告会社「ADKホールディングス」(旧アサツーディ・ケイ)を捜査する過程だった。
問題の入札は平成30年に計26件(総額約5億4千万円)行われ、最多となる5件を電通とイベント会社「セレスポ」が落札していた。特捜部と公正取引委員会は昨年11月26日、この2社を先行して家宅捜索し、捜査を本格化。「端緒を得るのが難しい」(検察関係者)とされる談合事件で「事件が次の事件を呼び込んだ理想的な形」(検察OB)だった。
■リストで「基準」に
独占禁止法の禁じる「不当な取引制限」を巡る捜査では、入札に参加した事業者が事前に受注調整に関する合意をし、事業者間で相互に競争を制限したことを立証する必要がある。事業者間のやりとりを示す客観証拠をどこまで収集できるかがポイントとなる。
立件の決め手となったのが、事業者側の応札意向をまとめた「リスト」だった。関係者によると、森容疑者は各社と面会し応札希望や運営能力を把握すると、組織委に電通から出向していた担当者に伝え、担当者はリストの更新を繰り返していたという。
実際、事業者はほぼリスト通りに落札。検察幹部は「リストの結果を見れば、事業者間の合意は相当程度推認できる」とする。
実際の落札結果が違っても、受注調整に関する合意が事前にあるだけで「不当な取引制限」は成立するが、刑事事件になるケースでは「実際の落札結果と一致しないと着手しない」(検察幹部)。こうした検察庁内の〝基準〟も、リストの存在で満たされた。
■認識のずれも
今回の事件が特殊なのは、事業者同士が「横のつながり」で受注調整を行う一般の談合事件と違い、担当者らが一堂に会して話し合う機会がなかった点。だが特捜部は、発注者側である森容疑者が、発注方式が決定する前から各事業者と繰り返し面会していたことに注目した。
過去には、旧日本道路公団発注の鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事を巡る談合事件などで、発注者側が共犯として起訴された例もあり、特捜部は森容疑者が主導して談合が行われたと判断。「森容疑者を『中継地』としており、事業者同士の会話はなくても独禁法違反は成立する」(検察幹部)との見方を強めていった。
入札が行われたのは計画立案支援業務の発注のみだったが、落札した9社がそのまま本大会の運営などを入札を伴わない随意契約で受注しており、「合意時の客観証拠を見ていくと本大会の運営までが一体となっている」(検察幹部)と認定。本大会の運営委託なども含め立件に踏み切った。
独禁法違反事件は一般的に、容疑を認めれば在宅起訴となるケースが多い。
逮捕された4人のうち、番組制作会社「フジクリエイティブコーポレーション(FCC)」専務の藤野昌彦容疑者(63)とイベント会社「セレスポ」専務の鎌田義次容疑者(59)は否認。電通の元幹部の逸見容疑者は1月下旬以降、趣旨も含め談合を認めていたが、電通社内で主要な役割を担っていたことが考慮されたとみられる。
当初否認していた森容疑者は認める方向に転じたが「下請けに回るよう指示したり、落札が決定したと伝えたことはない」とも供述。事業者側との認識にずれが生じており、特捜部は逮捕してさらに調べる必要があると判断した模様だ。
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競争原理が働かない談合で無駄な税金が使われたのでしょうか。電通にコンプライアンスはないのでしょうか。
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