党内融和か、国民世論か。総裁選時から掲げる「ルールを守る」にこだわった石破茂首相が下した決断は後者だった。自民党派閥裏金事件を受けた衆院選の対応で、裏金議員の比例代表重複立候補を認めないという厳正対処に踏み切った。厳しい姿勢を主張した小泉進次郎選対委員長の案に首相は同調し、慎重派を押し切った。「腹はくくった」と首相周辺は明言。今年最大の政治決戦へ向け、勝負に出た。 「どのようにすれば、わが党が勝てるかという観点から判断した。国民の批判は私どもが思ってるよりも、はるかに強い」。7日夜、党本部。オンライン開催した自民の全国幹事長会議で、首相は理解を求めた。 公認を巡る党執行部内の攻防は先週中盤から加速した。3日昼。首相は官邸に森山裕幹事長、小泉氏を呼び、公認により厳しく臨むよう指示した。 「(党内)みんなを納得させるのは無理だ。可能な限り、(国民に)広く理解してもらえる案にしないと」。周辺にこう漏らした。 それまでは候補者の処遇に差をつけることに慎重な森山氏が主導。党の処分と「二重処分」になるため、小選挙区は「原則公認」とし、比例代表の重複にも一定理解を示していた。 そこに待ったをかけた首相。政権発足後の各世論調査で内閣支持率は、50%前後と「ご祝儀相場」は低かった。裏金議員の公認に「反対」が大勢を占めたことにも危機感が強まる。 8月に行った総裁選の立候補会見で「公認にふさわしいか、議論は(党の)選対委員会で徹底的に行われるべきだ」と“宣言”したことも跳ね返り、強気に出ることに一気に傾いた。 5日夜、能登半島地震の被災地視察などを終えた首相は党本部へ。森山氏や小泉氏、側近の赤沢亮正経済再生担当相も加わって協議した。小泉氏が示したのが、裏金議員の一部非公認や比例重複も認めない案だった。 「地方組織の公認申請をひっくり返すには相応の理由がいる」。数が多い旧安倍派が反発すれば、党と政権の運営に影響するのは必至。渋る森山氏を前に、首相は国民を向いた姿勢を強調して小泉案を推した。 裏金議員の多くは足場が弱く、元々苦戦が予想されていた。惜敗率から比例復活も難しいとの見方があり、「今回の判断で当落の数は変わらない」(自民関係者)という声もある。首相は世論を味方に付け「全体の(票の)底上げになってくれたら良い」と考えた。 首相の決断に、無派閥の若手は「批判が多少和らぐはず。比例で自民と書きやすくなった人も出てくる」と歓迎。公明党関係者も「原則公認のままなら、うちも雪崩に巻き込まれていた」と安堵(あんど)の表情を見せた。 一方、旧安倍派を中心に反感は広がるばかり。総裁選で石破氏を支持したある議員は比例重複が認められない見通しで、「こんなやり方は許されない。聞いてない」と憤怒した。別の議員も「挙党一致にひびが入る」と切り捨てた。 「裏金議員は小選挙区で勝ち上がってこそ、地元の理解を得たと証明できる」。政府関係者は批判を一蹴した。
(岩谷瞬、小川勝也、大坪拓也)
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国民世論を反映すると、裏金議員に厳しい対応をしないと、自民党総崩れでしょうか。
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