忘年会の季節です。お酒を飲んで、この1年の苦労を忘れてしまいたいですよね。でも、お酒の糖質が気になっている人もいるのではないでしょうか。そこで、糖質制限中の人でも飲んでいいお酒について、糖質制限食の体系を確立したパイオニア、高雄病院(京都市)の江部康二理事長に聞きました。【毎日新聞医療プレミア】
◇蒸留酒は糖質ゼロ
糖質制限中でもOKなお酒として、まず挙げられるのはウイスキー、ウオッカ、焼酎、ジン、ブランデー、ラムなどの蒸留酒です。蒸留してしまえば、原料が芋でも麦でも米でも、糖質はゼロ(ジンとラムは100g中0.1gの糖質を含む)になります。
各メーカーが販売する「糖質ゼロ」の発泡酒や日本酒などはどうでしょうか。これらには100g中0.5g未満の糖質が入っている可能性があります。しかし、私が実践しているスーパー糖質制限食は、「1回の食事の糖質量20g以下」ですから、この程度なら問題ありません。
◇白ワインは辛口を
次にワインを見てみましょう。日本食品標準成分表2015年版(七訂)によると、一般的な赤ワインは100g中に1.5g、白ワインは100g中に2.0gの糖質を含んでいます。
したがって、白ワインならば「シャブリ」などの辛口を選ぶのが良いでしょう。氷結したブドウから作るアイスワインや貴腐菌が付いたブドウから作る貴腐ワインは甘くて糖質量が多いのでNGです。
◇フィリップ・マーロウが好むギムレットは?
「バーテンさん、芋焼酎水割り!」とは言いにくいしゃれた店やホテルのバーでは、カクテルを飲みたいですよね。
“If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.(タフじゃなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない<生島次郎訳>)”
かっこいいですね。人生で1回ぐらい言ってみたいです。これは、レイモンド・チャンドラーの遺作「プレイバック」の中で私立探偵フィリップ・マーロウが言うせりふです。そのマーロウが別の作品「長いお別れ」の中で好んで飲むのが、ギムレットというカクテルです。
ギムレットは、シェーカーに全量の4分の3のジンと、全量の4分の1のライムジュースを入れてシェイクしたカクテルだそうです。つまり、ジンライムをシェイクしたものがギムレットで、両方とも糖質制限中の方でもOKなカクテルです。
◇ジェームズ・ボンドが飲むウオッカ・マティーニもOK
そして、「007」シリーズの主人公、かのジェームズ・ボンドが好むカクテルがウオッカ・マティーニだそうです。こちらも糖質制限中でもOKです。ウオッカを全量の4分の3(45mL)、ドライベルモットを全量の4分の1(15mL)、デコレーションにオリーブ1個とレモンピール1片。アルコール度が高くキツいお酒です。
ジンベースまたはウオッカベースは「OK」なカクテルが多いので、良きパートナーと共に楽しんではいかがでしょうか?
◇アルコール飲料には発がん性がある
さて、アルコールは1g当たり約7kcalですが、「糖尿病専門医研修ガイドブック」(改訂第4版)によると、体重増加作用はなく、血糖値の上昇もありません。
しかし、国際がん研究機関(IARC)の評価では、アルコール飲料は発がん性があり、口腔(こうくう)がん、咽頭(いんとう)がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんのリスク要因とされています。
では、どの程度ならば飲んでもよいのでしょうか。世界がん研究基金(WCRF)の2007年の勧告では、アルコール摂取の推奨量は、男性が1日2杯、女性は1日1杯までとしています。1杯はアルコール10~15g相当です。また、米国糖尿病学会は、1日にアルコール24g(30mL)を食事と共に取る程度を適量としています。ビール(アルコール度数5%)なら600mL、ワイン(同15%)なら200mL、ウイスキー(同43%)なら70mL、焼酎(同25%)なら120mLです。
◇血中の中性脂肪濃度も高める
また、過度のアルコール摂取は、肝細胞内で中性脂肪の過剰合成を引き起こします。一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となり、一部は肝臓外へ分泌されて血液中の中性脂肪分の濃度が高くなる高中性脂肪血症の原因となります。
楽しい忘年会の季節ですが、くれぐれも、飲み過ぎにはご用心。
(毎日新聞)
ビールや日本酒以外は問題なさそうです。飲み過ぎは論外ですが。