■2016年のスペイン・ヘレスのテストで、ペドロサ選手を上まわるタイムをマーク
本田技研工業 執行役員の森山氏は、ツインリンクもてぎの開業20周年を祝して行なわれたセレモニーで登壇し、現在IDEMITSU Honda Team AsiaからMoto2クラスに参戦している中上選手を2018年からMotoGPにフル参戦させると発表した。同選手について森山氏は、「2016年のオランダGPでMoto2クラス初優勝を飾り、その後も表彰台に何度も上がる活躍を見せています。新たなステージでさらに活躍し、多くの若者の目標となるグランプリライダーに成長してくれると期待しています」と語った。
なお、20周年セレモニーでは運営元のモビリティランドより、MotoGP日本グランプリの開催を5年延長し、2023年までの継続開催が決定したことも発表された。同社取締役社長の山下氏は、「迫力あるレースをこれからもファンのみなさまにお届けできることは主催者としても大変うれしいこと。世界最高峰クラスのレースを日本で継続して開催することは、モータースポーツ業界にとって大きな意義のあることだと考えております」と述べた。
セレモニーの後、中上選手らが開いた記者会見の内容は以下のとおり。
■中上貴晶選手
4歳でポケバイに乗り始めた時から、ずっと夢であったMotoGP。最高峰クラスのスタートラインに立つことができてすごく光栄で、感謝の気持ちしかないです。今年は日本GPを含めMoto2のレースが残り7戦ありますし、来季への勢いをつけるためにも、さらに集中して1勝でも多く勝ち星を上げられるよう精一杯戦っていきたいと思います。
(今年度不本意な結果が続いていることについて、MotoGP昇格は)正直なところ不安はありました。MotoGPに上がりたいという気持ちがずっと常に先行していた。普通に考えればランキング3位以上(がMotoGP昇格ライン)になると思っていた。(今年は)望んでいるシーズンの流れではないですし、ランキング7位で、まだ優勝できていないことも含めて不安はありました。焦りもどこかであったと思う。ただ今は、正式に発表となって気分的にはすごくすっきりしたというか、よりMoto2に集中して、とにかく何がなんでも多くの勝ち星を上げることしか考えていません。
(MotoGP昇格が決まったことを初めて聞いたときは)ホッとしたというか、いろんな感情がありました。頂点を目指して21年、バイクしかやってこなかったですが、今こうして2輪の最高峰の舞台に立てるのは、家族やバックアップしていただいたホンダさん、HRCさん、いろいろな方々の協力があってのもの。ここからが本当の厳しい世界、勝負だと思いますが、今はうれしい気持ちで一杯です。
(2016年末のヘレステストでMotoGPマシンに乗り、3日目に好タイムを出したことについて。いけるという)確信は正直ありました。1日目はMoto2よりも遅かったんですけど(笑)、そこからメカニックとテレメトリーの人たちと研究した。MotoGPマシンはMoto2に比べるとバイクのクオリティがすべて上だったので、乗って楽しかったし、今はすぐに乗りたいという気持ちです。
(チームメイトとなるカル・クラッチロー選手について)何回かパドックで会って、去年のバレンシアで長く話すタイミングがあった。その時に「ホンダにお前を(MotoGPマシンに)乗せてもらうようにプッシュしてもらうからな」と冗談で言われていて、クラッチロー選手にはフレンドリーな印象があります。来季、チームメイトとして仲良くやっていくことについて不安はないです。今年も何回か表彰台に上っているトップクラスの選手なので、コミュニケーションをうまくとって、すべてを吸収して、技術、結果につなげていきたい。
■本田技研工業 モータースポーツ部 部長 山本雅史氏
(中上選手をMotoGPに昇格する)決め手になったのは、昨年のオーストリアGP決勝の走りから。彼だったらMotoGPマシンに乗れるんじゃないかなと感じさせてくれるものがあり、年内(2016年)のテストに一度乗せてみようというのが最初のスタートだった。
昨年末のヘレスでMotoGPのテストを中上選手に3日間してもらった時は、初日は乗りこなすのに四苦八苦していたようだが、3日目には(現MotoGPのワークスRepsol Honda Teamの)ダニ・ペドロサ選手のタイムを上まわったり、ラップタイムをちゃんと刻んでくれたりして、それがHRCでの評価にもつながった。今シーズンは開幕から不運が続いているが、先週のオーストリアGPを見て、後半戦はみんなの期待に応えてくれるだろうと思い、決めた。
(不安は)ないことはない。昨年末彼といろいろ話をしていくなかで、私たち自身が反省しなければならないと思ったのは、プレッシャーをかけすぎちゃったんじゃないかなということ。鈴鹿8耐も走ってもらったのにヘアピンで転んでしまって、心配はしていた。(彼自身)何か引っかかっているよねと。来年(MotoGP)だぞ、というのを(我々が)プレッシャー的に感じさせてしまったのがあるのかなと。不安もあったけど、私は元々彼の走りを目の前で見ていて、彼がMotoGPでもやっていけると思っているし、期待に応えてくれると思っている。
■ホンダ・レーシング 取締役 レース運営室 室長 桒田哲宏氏
MotoGPは、ご存じのとおり世界最高峰の2輪レースとなるので、体力面で求められるものが非常に厳しくなります。しかし、ヘレスのテストの時にすでにその片鱗を感じさせてもらっていて、体力的にきつくてかなり厳しいコンディションのなか、結果を出してくれた。今はしっかりトレーニングを積んで準備してくれている。世界最高峰レースのなかでもきちっと結果を出して、アジアの若者ライダーたちの目標になれるMotoGPライダーになれると考えているので、一層頑張ってほしい。
(中上選手の2017年のレースについては)攻めるに攻められないような状況があるんじゃないか、実力を出し切れていない状況があるんじゃないかと感じていた。まず一度“素”の中上選手に戻ってもらいましょう、というのもある。我々には、彼にMotoGPで走ってもらうことについて迷いはなかった。であれば、このタイミングで発表して、後半戦でその“素”の走りをしてもらって、来年につながればいいんじゃないかと思っています。
Car Watch,日沼諭史
結果はどうなるだろうか。
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