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「何よりも患者さんのために」 高橋英樹が渋い声で語りかけるCMも、いまや空疎な響きだ――。ジェネリック医薬品の安心・安全を訴えてきた沢井製薬の信頼は、地に堕ちてしまった。 「10月23日、沢井製薬は、胃潰瘍や急性胃炎向けの後発薬である『テプレノンカプセル50ミリグラム「サワイ」』の品質検査に不正があったと発表し、謝罪会見をおこないました。 具体的には、製造から3年たったカプセルが、きちんと胃の中で溶けだすか調べる検査で不正がありました。 沢井製薬は、このカプセルがうまく溶けなかったため、別のカプセルに詰め替えて検査をしていたのです。一時期は、ジェネリック医薬品の売上1位を誇るなど、“業界の風雲児” ともてはやされた同社の杜撰な不正に、衝撃が広がっています」(社会部記者) だが近年、沢井製薬に限らず、ジェネリック医薬品メーカーの不正が相次いでいる。 「小林化工は睡眠薬の混入で死者を出し、2023年に廃業。日医工も不正が発覚し、2021年までに75品目を自主回収、2022年には事業再生ADRを申請しています」(同前) 特許の切れた薬を同じ成分で安く製造する――。理論上は、同じ薬効を持つはずのジェネリック医薬品だが、現場の医師からはこれまでも “疑惑の目” が向けられていた。 「ジェネリック医薬品の効果が低いことは、うすうす感じていました」と語るのは、宮田胃腸内科皮膚科クリニック院長の宮田直輝医師だ。 「たとえば降圧剤を服用し、血圧が安定していた患者さんがジェネリックの降圧剤に変えたところ、突然血圧が不安定になってしまった、というケースがあります」 麹町皮ふ科・形成外科クリニック理事長で皮膚科形成外科専門医の苅部淳医師は「塗り薬は違いが出る」と言う。 「薬を溶かし、皮膚に浸透させる役割を担う “基剤” の差で、効きやすさや副作用の出やすさが変わります。 私は顔や首などの皮膚が薄い部位に使用する薬は『ジェネリックへの変更不可』と、わざわざ処方箋に書いています。特に、炎症を止めるためのステロイド外用剤などですね。 飲み薬でも、傷の治療のためにテトラサイクリン系抗菌剤を処方したところ、不思議なほどに傷の治りが悪かったことがあり、おかしいなと思っていたら、じつはジェネリックだったということが何度かあります」 歯科でも同じだ。クリニックF&T院長の高見澤哲矢歯科医はこう語る。 「私は、ジェネリック医薬品は一切使いません。歯科治療でよく使用するのが、痛み止め、いわゆる非ステロイド性抗炎症薬ですが、先発品とは効きが違います。 また、感染症を防ぐためのマクロライド系抗生物質でも、ジェネリックだと効果が低いという経験が何度もあります。私自身もお医者さんにかかる際は、ジェネリック医薬品はやめてほしいと伝えていますよ」 目薬にも違いがある。 「緑内障の治療のために、眼圧を下げる目薬を使っていた方が、薬局が変わったことを契機にジェネリックに変わった途端、眼圧が約2mmHg(ミリ水銀)程度高くなったことがあります。目薬は、効能を維持するために防腐剤や添加剤が多く含まれており、違いが出やすい可能性があります」(ルクスアイクリニック代々木上原院長・河本立徳医師) 通常、処方箋を書く際に医師が指定するのは薬の種類だけで、ジェネリックか否かは薬局が決めること。患者と接することが多い薬剤師も “苦情” を多く聞いてきた。 「今回の沢井製薬の胃薬もそうですが、ほかには性感染症治療に使う抗ウイルス薬が効かなかったり、睡眠導入剤を飲んでも眠れないという相談を受けることがあります。あとは湿布がかぶれるという苦情も多いですね。 ただ、ジェネリックを多く出すと、調剤基本料に加え、後発医薬品調剤体制加算という “ボーナス” を国からもらえるシステムなんです。なので、利益重視の薬局では、無理にでもジェネリックを出すように現場に圧力がかけられます」(薬剤師) 五良会クリニック白金高輪の五藤良将理事長はこう語る。 「もちろん、薬価の安いジェネリック医薬品を使うことで、国全体の医療費の削減に繋がるのは確かです。しかし、品質管理のできていない薬のせいで、治療ができないとなれば、元も子もありません。制度改革が必要ですよ」 割高でも先発品にこだわることで、患者が自衛するしかなさそうだ。 取材&文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)
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儲からないジェネリックで薬不足は、本末転倒です。
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