<プロボクシング:WBAスーパー、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級王座統一戦>◇26日◇東京・有明アリーナ WBC、WBO世界スーパーバンタム級王者井上尚弥(30=大橋)が史上2人目となる2階級での4団体統一に成功した。WBAスーパー、IBF世界同級王者マーロン・タパレス(31=フィリピン)と4本のベルトを懸けて拳を交えた。4回にはダウンを奪取。10回には右ストレートでダウンを奪い1分2秒、KO勝利した。スーパーライト級、ウエルター級で4団体統一に成功したテレンス・クロフォード(米国)に続き、史上2人目の快挙となった。WBC、WBO王座の初防衛にも成功した。 最後は右拳で相手の心を折った。10回、井上が右ストレートでタパレスのこめかみ、額周辺を打ち抜いた。ダメージでロープ際まで後退し、崩れるようにダウンした相手を確認した井上はコーナートップによじ登って勝利を誇示。バンタム級の4団体統一から、わずか1年後。井上は「戦って(タパレスは)1発のパンチもありましたし、自分も非常にピリピリしながら試合を進めることができた。1つ階級を上げて、こうして4本のベルトを集めることができました」と満面の笑みで報告した。 クロフォードは8年3カ月かけて2階級での4団体統一を達成させたが、井上はWBA世界バンタム級王座を獲得した18年5月を皮切りに5年7カ月と大幅に“偉業”を更新する最速記録となった。これで14年4月のWBC世界ライトフライ級王座獲得から区切りの10個目となる世界ベルト奪取となった。 今年7月、井上は無敗のWBC、WBO世界同級王者スティーブン・フルトン(米国)を8回TKOで撃破。一気に2本の世界ベルトを獲得した。その試合を視察したタパレスもリングに上がり、年内の統一戦を約束。5カ月後に実現した。井上は「タパレスがリングに上がって次戦が約束された瞬間、自分の中では気が抜けないという感覚がありました」と振り返った。 試合前2カ月間で、メキシコ人のスパーリング相手4人を呼び、総スパーリング数は計116ラウンドにのぼった。最近の世界戦前は計70~80ラウンドが平均だったこともあり、約1・5倍の実戦練習量となった。所属ジムの大橋秀行会長(58)は「井上尚弥史上、もっともハードなスパーリングになったと思う」と手応えを示していた。 海外のブックメーカー(賭け屋)のオッズでは、井上が有利。試合当日も英大手ウィリアムヒルでは、井上の勝利に1・05倍がつけられ、タパレスは10倍と差がついた。その「鉄板オッズ」のムードを払拭(ふっしょく)するように練習に打ち込んだ。井上は「周りの楽勝ムードを吹き飛ばすため。自分の中では、周りのムードが自分の中で怖いと思っている。それを自分でも切り替える意味で、トレーニング内容と向き合いながら調整してきた」と気を引き締めてリングに向かっていた。 史上2人目の2階級での4団体統一は世界的にも偉業と言える。大橋会長は「新たなモンスター伝説の始まり」と言った。24年は日本人初となる4団体統一王者として防衛成功、25年にはフェザー級転向で日本人の世界5階級制覇へ、26年以降はスーパーフェザー級など、さらなるウエートで海外のスター選手と戦うという夢も広がる。 試合後のリング上では、このスーパーバンタム級を適正階級と表現。「来年、再来年とこの階級で試合をしたい」と話した。来年5月には元WBC世界同級王者ルイス・ネリ(29=メキシコ)戦との話もある。「ファンが喜び、見たい試合を実現したい。(対戦したい選手は)どんどん声をあげていただきたい」と訴えた。 【ラウンドVTR】 ◇1回 井上は慎重に距離を測りながらジャブを突き、踏み込んで右を放つ。タパレスはガード固め、手数少なく守りの姿勢。井上は積極的にジャブを打つが強引には出ず。井上10-9タパレス ◇2回 タパレスが勢い余って前のめりに倒れるスリップダウン。井上はタパレスが出てきたところを逃さずワン・ツーを放つ。タパレスは井上の強打を警戒か攻めは消極的。井上10-9タパレス ◇3回 井上が積極的に前へ。右アッパーからのワンツーでロープに詰める場面も。井上の強烈な右ストレートがヒットし始め、タパレスの右ガードが下がる。井上10-9タパレス ◇4回 タパレスが攻めに転ずるも、逆にカウンターを被弾。井上は右ボディー連打で、タパレスの弱点を突く。タパレスもボディーを狙うが、井上の強烈な左ボディーが突き刺さる。終盤に左アッパーからラッシュでダウンを奪う。井上10-8タパレス ◇5回 井上がゴングから猛ラッシュ。左ボディーから右ストレートでタパレスの足を止める。タパレスも必死に応戦。右フックからの左ストレート、右アッパーでばん回を図る。井上10-9タパレス ◇6回 タパレスが攻めて前に出る。右を中心に井上をコーナーに詰める場面も。井上は無理をせず、間合いを測りながらワンツー。残り1分は強烈なワンツーで井上がペースを奪い返す。井上10-9タパレス ◇7回 井上のカウンターの左フックにタパレスが一瞬、グラつく。その後はともに手数少なく、様子を見るラウンド。終了間際、タパレスの左ストレートが井上の顔をとらえる。井上10-9タパレス ◇8回 タパレスが体を密着しての左ボディー。井上は飛び込みながらの左フックも決定打とはならず。井上10-9タパレス ◇9回 タパレスのワンツーが井上の顔をとらえる。しかし、井上はすかさずワンツーでタパレスをコーナーまで吹き飛ばす。終盤に井上が右のカウンターもダメージは与えられず。井上10-9タパレス ◇10回 タパレスが先に仕掛けて積極的に出る。そこに右ストレートを浴びせダウン。そのまま10カウントが数えられて井上がKO勝ち。世界2人目となる2階級での4団体統一を果たす。 【井上の世界戦記録アラカルト】 ◆連勝 21連勝中で日本歴代1位。2位は具志堅用高の14連勝、3位は山中慎介の13連勝と続く。 ◆KO数 19KO(26試合)で日本歴代1位。2位は10KOで内山高志(14試合)、井岡一翔(33試合)。3位は9KOで具志堅用高(15試合)、山中慎介(15試合)と続く。 ◆世界戦通算勝利 21勝は井岡一翔と並ぶ歴代1位。 ◆最短KO 18年10月のパヤノ戦でマークした70秒(1分10秒)は日本男子歴代1位。2位は平仲明信が92年4月にマークした92秒(1分32秒)。 ◆海外防衛 3度成功は日本歴代1位、2位は2度の西岡利晃、亀田和毅
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2階級で4団体制覇は素晴らしい。これ以上の階級アップは難しいでしょうか。
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