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東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)の辞任と、前日11日に森氏からの後継指名を受諾する考えを示していた川淵三郎氏(84)の辞退による後任人事の白紙化という前代未聞の事態は、日本の混乱ぶりを世界に知らしめることとなった。東京大会は一体、どうなってしまうのか。スポニチ本紙の藤山健二編集委員(61)が混迷する祭典を語った。 川淵氏の就任で心機一転再スタートのはずが、一夜にして白紙に戻る大どんでん返し。両氏が事前に各方面に何の根回しもしていなかったのも驚きだが、進退問題のさなかには「組織委が決めること」と知らん顔を決め込みながら、後任には口を出す政府や与党の二枚舌にはあきれてものが言えない。森氏の“女性蔑視発言”から始まった今回の混乱がどれだけ国民の五輪離れを加速させたか、この人たちはまだ分からないのだろうか。ただただ情けない限りだ。 IOCは五輪憲章で政治の介入に対して厳しい姿勢を示している。日本ではほとんど報道されていないが、先月には財務面などが政府の管理下に置かれているとしてイタリア・オリンピック委員会が資格停止処分の対象とされた。2026年にミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪を開催することになっている同委員会は開催権の剥奪を恐れ、慌てて独立性を保証する法案を議会に提出。かろうじて処分を免れた。 現実にはスポーツと政治は切っても切れない関係にあり、政治からの独立はお題目にすぎないのだが、少なくとも表向きIOCはこの問題に関しては敏感に反応する。もし今回のどんでん返しが政権主導で、後任も政権側の意向に沿って選出されるようなことにでもなれば、五輪憲章違反の疑いを持たれる可能性は十分にある。そうなれば最悪、東京五輪の開催権剥奪、つまり五輪を開くための新しい会長を選ぶことによって五輪が消滅するという本末転倒の話にすらなりかねない。 聖火リレーがスタートする3月25日までには、国民の最大関心事である五輪を開催するのか中止するのか、最も重大な判断をしなくてはならない。予定通りの日程で開催するのであれば観客を入れるのか入れないのか、医療体制をどうするのかなど早急に詰めなければならない問題は山積みされている。これ以上ごたごたに明け暮れている暇は一日たりともない。 選考過程をオープンにした上で実績も人望もある川淵氏が新会長に就任していれば五輪に反対する世論も少しは改善されたのかもしれないが、その唯一のチャンスもついえた。「女性蔑視」「老害」の批判を受けたから「女性」か「若い人」で――。そんな安易な発想で2兆円もかけた国家的イベントのかじ取り役が務まるのか。もはや誰がなっても世論の支持は期待薄で、東京五輪を取り巻く環境は完全に漆黒の闇に包まれてしまった。(編集委員)
▽オリンピック憲章(Olympic Charter) オリンピックの憲法とも呼ばれ、最新は2020年7月版。オリンピズムの根本原則として「スポーツ団体は、スポーツが社会の枠組みの中で営まれることを理解し、政治的に中立でなければならない」と明記している。また、第4章「NOC(各国オリンピック委員会」の中には「IOC理事会はNOCの国内でのオリンピック・ムーブメントを保護するため、その国で効力のある憲法、法律、その他の規則、もしくは政府やその他の団体の条例がNOCの活動を阻害した場合、あるいはNOCの意思の形成または表明を妨げた場合(中略)、オリンピック憲章違反が適用される対応措置と制裁のほか、NOCの承認の取り消し、または資格停止を含む、適切なあらゆる決定を下すことができる(以下、省略)」との条文もある。
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コロナ禍で東京五輪開催中止の序章だろうか。
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