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酷暑化が進んで熱中症の懸念が高まるなか、厚生労働省は2018年から、一定の条件を満たす生活保護世帯に対し、エアコン購入費の支給を認めている。しかし、実務を担う自治体によっては判断がぶれることもあり、支援団体からは「消極的な対応をしている自治体もある」との指摘が出ている。 名古屋市内で生活保護を受けている男性(74)は今年4月、転居先のアパートに設置するエアコン購入費の支給を同市南区役所に申し出たが、当初は認められなかった。 生活保護を受けている人が転居する際、国は「新旧住居の設備の相違により補塡(ほてん)しなければならない」場合などでエアコン購入費の支給を認めている。 厚労省は2018年春まではエアコン購入費の支給を認めておらず、生活保護世帯は生活費をやりくりするなどして購入するしかなかった。 しかし、気候変動によって暑さがひどくなり、熱中症を防ぐためにも、世帯内に高齢者ら熱中症予防が必要な人がいる場合や、災害に遭った場合など一定の条件を満たす生活保護世帯に対し、エアコン購入費の支給を認める方向に転じた。いまは上限5万4千円まで購入費が認められている。 この男性の場合、旧住居はエアコンが備え付きで大家の所有だったため、新住居では新たに購入する必要があり、国の基準で支給を認められるケースに合致する。 しかし、南区は「自己都合による転居の場合、事情に応じて判断している。原資は税金でもあり、転居でも無条件にOKしていない」(民生子ども課)方針といい、いったんは男性に支給を認めないことを伝えた。 男性は6月中旬に実際に転居した。エアコンなしでは寝苦しい夜が続いたことから、改めて南区に支給を相談。その結果、今度は認められた。 厚労省は「犯罪等により被害を受けた場合」も転居時のエアコン購入費支給を認めている。同課によると、転居前に隣人から暴力を受けた事情を考慮して、転居せざるをえなかったと認め、エアコン購入費を支給するに至ったという。 研究者らでつくる「生活保護情報グループ」のまとめによると、2018~19年度に全国でエアコン購入費が支給されたのは9025件。保護世帯1千世帯あたりの件数を自治体ごとに計算すると、政令指定市では最少0・7件から最多11・0件などとばらつきがあった。地域によって実際に暑さの違いがある一方で、生活保護の費用は原則として地方自治体が4分の1を負担し(残りは国の負担)、支給を認めるかどうかの実務も自治体が担っている。このため、エアコン購入費に限らず、負担を嫌う自治体による裁量が大きいとも指摘されている。 名古屋市のNPO法人「ささしまサポートセンター」の横井久実子さんは「支援活動をするなかで、公費によるエアコン設置を断られ、つらい思いをしている生活保護受給者に出会っている。厚労省は、自治体が消極的な対応に至らないよう、基準を徹底してほしい」と話している。(関根慎一)
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猛暑でエアコンは必需品でしょう。