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セシリアは観光局長に
当初は「取り返しのつかない過ちを犯した」と白眼視されていたセシリアだったが、世間とはしょせん、現金なもの。彼女への視線は、この観光フィーバーによって様変わりした。 「セシリア氏は騒動後ほどなくして、ボルハの観光局長の肩書を与えられ、テレビ番組の特別ゲストに招かれるなど、下にも置かぬ扱いを受けることになりました。13年8月には、セシリア氏と教会との間で、関連グッズの売り上げに対して発生する著作権使用料のうち51%を教会が、残り49%をセシリア氏が受け取るとの合意も成立。セシリア氏はすっかり『町の救世主』となったのです」
「壁画をそのまま守れ」という署名も
修復された〈この人を、見よ〉の経済効果はその後も続いているといい、ボルハの町にはこれまでで100以上の国や地域から、30万人を優に超える観光客が訪れている。 「2年前の9月にはボルハ町長の発案で『修復から10周年』を記念した式典が2日間にわたって行われました。91歳となっていたセシリア氏もこの式典に主賓として招かれ、車椅子で参加したといいます」 町民たちの“手の平返し”にはあきれるばかりだが、笑えるのは10周年を機に行われた専門家による絵画の調査。12年の騒動時には「復元は不可能」とされていたものが、今度は一転、「復元は可能」と真逆の結論が出たのである。 ところが、 「そもそも元の〈この人を、見よ〉は、1930年ごろに地元近くの芸術大学教授が描いたもので、取り立てて秀作というわけでもなく、騒動の前にはその存在に目を止める人はおりませんでした。そんな壁画に復元されてしまえば、当然、観光客の足はボルハから遠のいてしまう。そこで『セシリア婆さんの修復壁画をそのまま守れ』という住民の請願運動が行われ、1万筆以上の署名が集まったそうです」 現在93歳となったセシリアは少し認知症の症状が見られるものの健在。息子とともに町立の高齢者施設で、騒動以前と変わらぬ慎ましい生活を送っているという。
「週刊新潮」2024年8月15・22日号 掲載
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へたくそな修復後に観光フィーバーは笑える。
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