三重県内でクマに襲われて重傷者が出たことに伴い、県南部を中心に警戒感が広がっている。小中高校では夏休み明けから通学時の安全を確保するため、スクールバスの運行などの検討も始まった。一方、県内に生息するクマは、絶滅が危惧される生物として環境省から指定され、原則として捕獲・駆除が禁じられている。一見勝之知事は22日の定例記者会見で、捕獲・駆除できるよう規制緩和を環境省に申し入れる考えを示した。(増実健一、根岸詠子)
今月14日、大紀町の熊野古道「ツヅラト峠」で、大阪府から訪れた登山客がクマに襲われ、重傷を負った。県は住民に注意を促す「県ツキノワグマ出没注意報等(クマアラート)」を10市町に発令。大紀、紀北町は「警報」、松阪、尾鷲、熊野市と明和、多気、大台、御浜、紀宝町は「注意報」とした。
一見知事は22日の会見で、「県民の安全が大事。本当に保護対象でいいのか。駆除対象にした方がいいのではないか」と訴えた。奈良、和歌山県を含めた紀伊半島のツキノワグマは、他の地域に生息するクマとは種類が異なり、環境省から「絶滅危惧IB類」に指定されている。県は1994年から、南部のツキノワグマの捕獲を禁じている。別の害獣を対象にしたワナにクマがかかった場合は、クマを威嚇して人間への恐怖心を与えた上で、山に帰してきた。
今回、重傷者が出た大紀町については、県が例外的にクマの捕獲を認め、ワナによる捕獲が図られることになった。だが、クマアラートが発令されている他の9市町は、現在も捕獲が認められていない。40年前の調査では、紀伊半島に生息するクマは推定180頭で、極めて少なかった。現在、環境省は再調査を進めており、推定250頭を超えた場合はレッドリストの指定を見直す可能性がある。再調査は来年春までに完了する見通しだが、県は年内に調査を終えるよう求めている。
県内で今年4月から8月21日までに確認されたクマ出没件数は70件を超え、2023年度の40件を大幅に上回っている。住宅街や田畑の近くなど人の生活圏まで出没した事例も目立つ。
各市町の学校や教育委員会は、2学期のスタートを控え、児童・生徒の安全をどう確保するか苦心している。22日が登校日だった尾鷲市立尾鷲小学校は、登下校の時間に合わせ、市職員や尾鷲署員、教職員らが通学路の周辺を巡回した。21日午前10時頃、通学路付近でクマが目撃されていた。県立尾鷲高校も、近くでクマの出没情報があったことを受け、朝の部活を当面、見合わせている。
県教育委員会は、イラスト付きの「クマ対策マニュアル」を県立校や市町の教委に配布した。クマに背を見せて逃げるイラストに「×」を付けるなど、子供にも分かりやすくした。県によると、スクールバスの運行を検討している地域もあるという。県は政府に対し、各市町がクマのパトロールにあてる費用を補正予算に盛り込むよう求める考えだ。
熊野古道は今年、世界遺産登録20周年となり、にぎわいの増加が期待されていた。観光への悪影響も懸念されている。
熊野市は、市内を通る熊野古道に、ハンドベルの設置を進めている。クマは大きな音を嫌がる性質があるため、登山者にハンドベルを鳴らすよう呼びかけている。担当者は、近くに人間がいることをクマに知らせ、「近寄らせないことが大事」と説明する。
尾鷲観光物産協会では、6月から熊野古道を歩く観光客向けにラジオや鈴、クマ撃退スプレーを貸し出している。ツヅラト峠で被害者が出て以降、借りる人が急増しているという。紀北町観光協会も、ホームページなどでクマの目撃情報を発信している。担当者は「20周年で来訪者が増えると期待していたが、打撃を受ける可能性が高い」と話した。
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絶滅危惧種よりも人間の生命が大事でしょう。特定の地域を仕切って保護もありでしょう。
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