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2017年5月10日水曜日

大松尚逸 一度は浪人決意も…ヤクルト大松「泣きそうに」恩返し代打サヨナラ弾

◇セ・リーグ ヤクルト3―2広島(2017年5月9日 神宮)

 夢にまで見た瞬間だった。水やジュースのペットボトルを手にした仲間たちが本塁で待ち受ける。ヤクルト・大松が飛び込んでいった。

「最高です!感無量です。ホームベースに行く瞬間、泣きそうになるくらいうれしかった」

 延長12回。先頭で代打起用された。今季ここまで打率・158。「結果が出なくて悔しかった。いつか必ずと思ってた」。中田の124キロスライダーを振り抜いた。「頼むから入ってくれ」。サヨナラ勝利を決める移籍1号アーチが右翼ポール際に飛び込んだ。

 昨年5月29日、2軍戦で右アキレス腱を断裂。困難な日々が始まった。手術後のリハビリは車いす。いら立ちと悔しさが込み上げる。「一人では何もできなかった」。涙を流した日もあった。

 10月。古巣・ロッテから戦力外通告を受けた。リハビリ中。12球団合同トライアウトも受けられない。このまま引退なのか。「もう一度、野球がしたい」。純粋な思いが勝った。保証のない野球浪人を選んだ。愚直にリハビリを続けると、ヤクルトから声が掛かった。

 「野球ができないところまでいった。それでももう一度、野球がやりたいと思った気持ちを忘れずにいきたい。新しい道を切り開いていきたい」

 支えは妻・敦子さん(34)だった。松葉づえ生活になっても、力は入れにくい。雨の日は滑る。「ずっと気遣ってくれた」。偶然にもこの日、ヤクルト移籍後は初めて観戦に来ていた。父・三郎さん(65)とともに訪れた女神も力をくれた。

 14年4月25日の日本ハム戦(札幌ドーム)以来、1110日ぶりの一発。真中監督も「見事でしたね」と褒めちぎった。初めて上がった神宮のお立ち台。「はじめまして、ヤクルトスワローズの大松尚逸です!」。開幕前に出場した2軍戦でのヒーローインタビューでは「いつか1軍で」と封印していた自己紹介だった。大松が正真正銘、ヤクルトの一員となった。(川手 達矢)

 ◆大松 尚逸(おおまつ・しょういつ)1982年(昭57)6月16日、石川県生まれの34歳。金沢から東海大を経て、04年ドラフト5巡目でロッテ入団。2年目の06年に1軍定着。09年7月10日の日本ハム戦では、9回2死から右前打で多田野のノーヒットノーランを阻止。16年は右アキレス腱断裂の影響で1軍出場がなく、同年オフに退団。今年2月にテスト入団でヤクルトに移籍した。1メートル84、93キロ。左投げ左打ち。

 ≪移籍1年目初≫大松(ヤ)が自身初となる代打サヨナラ弾。ヤクルト打者の代打サヨナラ本塁打は4月2日DeNA戦の鵜久森に次ぎ13人、16本目で、延長11回以降に打ったのは初。また、チームでシーズン2本は77年に若松が1人で記録して以来4度目の最多タイだが、2人で達成するのは66年の福富、高山(当時サンケイ)以来51年ぶりとなった。なお、チームで移籍選手の代打サヨナラ弾は68年豊田(2本)、95年広永、鵜久森に次ぎ5本目。移籍初年度にいきなりは大松が初めてだ。
(スポニチアネックス)

 大松、真中監督いいね。

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