旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして、全国で初めて実名を公表して提訴した札幌市の小島喜久夫さん(79)が国に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁は15日、旧法を違憲と判断した。同種訴訟で違憲判断は3例目。広瀬孝裁判長は「旧法は極めて非人道的。子を産み育てるか否かの意思決定をする自由を侵害し、違憲」と述べた。しかし、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」が経過したとして、原告側の請求を棄却した。
全国9地裁・支部で起こされた同種訴訟13件(原告25人)のうち4件目の判決。2019年5月の仙台地裁判決と20年11月の大阪地裁判決も旧法を違憲と判断しているが、家族を形成する権利につながる憲法24条の違反を認めたのは初。賠償請求に対しては、同6月の東京地裁判決も含め過去3件はいずれも除斥期間が過ぎていることなどを挙げ棄却している。
判決などによると、小島さんは19歳だった60年ごろ、家族との関係が悪化し生活が荒れる中で、札幌市内の精神科病院に入院させられた。医師の診察はなく「精神分裂病(現在の統合失調症)」とみなされ、同意もないまま不妊手術を強いられた。
判決はまず、旧法の違憲性を検討。旧法の「不良な子孫の出生を防止する」という立法目的について「個人の尊重を基本原理とする憲法下において許容しがたい」と指摘。幸福追求権を定めた憲法13条や法の下の平等を定めた14条に加え、24条についても「国会の立法裁量の限界を逸脱すると言わざるを得ない」と判断した。その上で民法の除斥期間の起算点を手術時とし「賠償請求権は80年ごろに消滅した」と結論づけた。
原告側の弁護団は「不当判決を受け入れることはできない」と控訴する方針。厚生労働省は「国の主張が認められたものと認識している」としている。【土谷純一】
<判決骨子>
・旧優生保護法は憲法13条、14条、24条に違反する
・民法の「除斥期間」の規定により、不妊手術から
20年が経過した1980年ごろに賠償請求権は消滅
した
・被害者救済のための立法措置は国会の裁量の問題
で、国家賠償法に加えた措置を取らなかったことを
違法とするのは困難
◇旧優生保護法
ナチス・ドイツの断種法をモデルにした国民優生法が前身で、終戦直後の1948年、法文に「不良な子孫の出生防止」を明記し、議員立法で成立。国は施行後、「だまして手術してよい」と都道府県に通知し、強制性を強化した。国際的な批判を背景に96年、障害者への差別的条項を削除して母体保護法に改定。「強制」「任意」合わせ少なくとも約2万5000人が手術された。
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除斥期間経過で棄却は、血も涙もない判決。司法判断ではなく、国の責任で救済すべき問題だろう。
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