立岩陽一郎【ファクトチェック・ニッポン!】 毎日放送の番組で在阪ロシア総領事のテルスキフ・アレキサンダー氏のインタビューが放送された(3月16日)。大八木友之記者の取材に対して、流ちょうな日本語で「NATOは30年間で軍事配備をロシアの国境前まで接近させた。ウクライナも加盟国にして、対ロシア攻撃兵器を置く脅威がはっきり出てきた」とウクライナ侵攻の理由を語った。 終始「特別軍事作戦」と語る総領事に記者が「侵略や戦争ではないのか?」と問うと、「侵略、戦争ではない」とした。また、「ロシア軍が一般市民に脅威を及ぼすこともなく民間施設を攻撃することもありません」とも繰り返し強調した。記者が、「アパートにミサイルが撃ち込まれる映像。我々が見ているのは何なのか?」と問うと、「フェイクニュースということもある」と切り捨てた。 当然、インタビューが流れた後のスタジオ内は批判的なムードになる。「あれは本音なのか?」「言わされているのか?」となる。当然の反応だが、外交官である総領事が本国の方針と異なることを言うことはできない。スタジオにいた私は冷静に受け止める必要性を感じた。加えて、実は重要な内容も含んでいると感じた。 NATOの拡大への懸念。これが軍事侵攻を正当化しようとするロシア側の理屈にある。プーチン大統領も2月4日の演説の冒頭で「その間、NATOは私たちのあらゆる抗議や懸念にもかかわらず、絶えず拡大している。(中略)それはロシアの国境のすぐ近くまで迫っている」と語っている。「その間」とはNATO諸国と安全保障について合意形成しようとしてきた30年間のことだとしている。 小欄ではバイデン米大統領の演説を題材に、アメリカ側の狙いを推測してきた。それは、公的な発言を見極めることで情勢を分析するという元CIA職員の経験にならったものだ。ロシアのウクライナ侵攻を是とすることはないが、ロシアがNATOの拡大に懸念を示している点は無視してはならないだろう。 「誰かプーチン大統領を止められないのか?」との問いに、総領事は「プーチン大統領にNOと言えるのはロシア国民」と答えた。もちろん、多くの人がプーチン大統領を支持しているとはしたが、「反戦デモが起きているが?」との問いに、「ロシアは民主主義ですから、もちろん特別軍事作戦を支持している人も多いし、反対している人もいます」とも述べている。 こうした総領事の言葉をどうみるか。「プロパガンダだ」と言って無視したい気持ちはわかるが、ここは冷静に情勢分析に努めたい。例えば、ロシア国民がプーチン氏を止める可能性は全くないのだろうか? 実は、バイデン米大統領もそこに狙いをつけているように感じる。プーチン氏を「戦争犯罪人だ」と批判する一方で、「我々はロシアの人々の敵ではない」とも語っている。 日本にはプーチン氏のご機嫌取りに努めてきた政治家がいる。こうした点に沈黙を守っているようだが、まさかロシア国民がプーチン氏にNOと言う事態を望んでいないわけではあるまい。
(立岩陽一郎/ジャーナリスト)
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「プーチン大統領にNOと言えるのはロシア国民」は、ロシアにも民主主義があると言いたいだけでしょうか。
プロパガンダで真実を国民に伝えない、反戦デモを力で排除する、とても民主主義があるとは思えない。
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