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2017年3月26日日曜日

稀勢の里、奇跡逆転Vへ千秋楽も出る!強行出場も2敗目/春場所

 大相撲春場所14日目(25日、エディオンアリーナ大阪、観衆=7378)前日に左肩周囲を負傷し、けがを押して強行出場を決断した新横綱稀勢の里(30)は、横綱戦で鶴竜(31)に寄り切られ、2敗に後退した。大関照ノ富士(25)が関脇琴奨菊(33)をはたき込んで1敗を守り、逆転で単独首位に立った。優勝争いは11場所ぶり2度目の制覇を狙う照ノ富士と、2場所連続2度目の優勝を目指す稀勢の里に絞られ、2人は26日に千秋楽で直接対決する。

 異変ではない。尋常ではない所作になった。横綱土俵入り。両腕をまっすぐ大きく広げ、胸の前で打つ柏手が、こわごわ手のひらを合わせるだけしかできなかった。無音の柏手。いつもは館内に大きな音を響かせる稀勢の里の左肩、腕から力が抜けていた。土俵入りにもかかわらず、左肩前から背後、二の腕へかけて広範囲のテーピングが施されていた。

 鶴竜との横綱戦。稀勢の里は立ち合いで右から張り差しにいった。だが、攻めの動きはこれまで。もろ差しを許すとあらがうことができず、力なく寄り切られた。

 「一日では回復しない。やるからには最後までやる」

 前日、横綱日馬富士に寄り倒された際に左肩、胸前部にかけて激しい痛みを訴え、大阪市内の病院へ救急車で緊急搬送された。関係者によると、画像検査などの診察を受けたが、骨の異常、筋肉の断裂や長期的な治療が必要なほどの深刻なダメージは見当たらなかった、という。捻りや打突などによる衝撃痛とみられている。だが、痛みは新横綱にしかわからない。この日朝、師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)と出場可否について話し合い、「本人が『出たい、出る』と。本人の強い意思がある」と強行出場が決まった。

 かつて、日本相撲協会理事長も務めた元放駒親方(元大関魁傑)は、休場は「試合放棄」と表現した。可能性がある限り土俵へ立つ。それは、勝負師の哲学や美学の持ちようだ。平成13年夏場所千秋楽。横綱貴乃花は前日に右膝半月板を損傷する重傷を負い、師匠の二子山親方(元大関貴ノ花)からも休場を勧められながら、優勝が懸かっていたため強行出場。本割では横綱武蔵丸に簡単に突き落とされた。2敗で並び、優勝決定戦へ。そこで上手投げで相手を土俵へ転がし、両目を見開き、「鬼の形相」で仁王立ち。内閣総理大臣杯を手渡した当時の小泉純一郎首相は「感動した!」と絶叫した。その貴乃花親方はこの日、「詳しい症状はわからないので、何ともいえない。ただ、出る以上は皆さん、期待しているので期待に応えてほしい」。

 残すは26日の千秋楽だけ。星一つの差で追う照ノ富士に、本割と優勝決定戦で勝つことが、新横綱場所での優勝に残された道。稀勢の里は「大丈夫。集中してやる」。2月初旬、今場所の券売初日。15日間の前売り券は約2時間で完売した。切符を握りしめて来場したひとりひとりに、きっと新横綱の思いは伝わった。
(サンケイスポーツ)

 左が使えないと相撲にならない。

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