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本格的な冬が到来し、日本列島がコロナ「第3波」に見舞われている。急増する重症者に医療は逼迫。だが、政治家たちのメッセージは「経済が大事」「感染対策が大事」と、ブレブレで、国民は戸惑うばかり。日本はどのような道を歩むべきなのか。京都大学大学院の藤井聡教授に聞いた。
* * * 東京都内の飲食店やカラオケ店の営業時間短縮は、店にとってはこの書き入れ時に破壊的痛手。都民から生活や経済活動の自由を奪う前に、小池都知事にはやるべきことがあったはずです。 現在、都のコロナ重症者数は60人(11月26日時点)。それだけの人数で医療崩壊を招きかねないほど脆弱な体制しか準備できなかったのは、小池知事の責任です。都のコロナ入院患者数は約1500人ですが、コロナ対応病床として重症者用も含め十分な数を確保するくらいのことは、都と国が連携すればできないはずがない。予算がもったいないとでも思ったのでしょうか。 日本は財務省主導で緊縮財政の考え方が蔓延しており、政府は感染症対策や経済対策のお金を出し渋っています。つまり、国民の生命より財政規律を守ることを優先している。欧米各国では許されない異常な状況です。日本でコロナ感染が起きてから10カ月も経つのに、都と国は医療供給能力を増強してこなかった「不作為の罪」がある。小池知事と菅首相の責任は重いと言わざるを得ません。 政治家はすぐに「不要不急の外出は控えて」と言いますが、とり得る策は本来もっと多様です。 経済的に痛手を伴う自粛要請は、一律にではなくリスクの高い項目に絞って行うべきです。(1)「対象者」としては、重症化・死亡リスクの高い高齢者や基礎疾患者の行動自粛(2)「活動」としては、換気をしない部屋で大声を出しての宴会などの自粛(3)「行為」としては、自分の目・鼻・口を触らない──この3点を行ってもなお、重症者数や死者数の拡大が危惧される状況において、初めて全面的自粛であるステイホームが正当化されるのです。 自粛要請には十分な政府補償が必要です。1回きりの持続化給付金や都の協力金などでは、圧倒的に足りない。手本となるのは欧州の取り組みです。フランスでは休業したレストランやバーなどに対し、毎月1万ユーロ(約124万円)または売り上げの20%が支給されます。休業対象ではなくても売り上げが50%以下に減少していれば、前年の月平均の15~20%分を補助して飲食店を守っている。日本は現状のままではこの冬、大量の飲食店が潰れる。菅首相には財政規律の枠を取り払った抜本的対策を強くお願いしたい。 ふじい・さとし 1968年、奈良県生まれ。東京工業大学教授などを経て、京都大学大学院工学研究科教授。専門は公共政策論。近著に『「自粛」と「緊縮」で日本は自滅する 菅総理への直言』(ビジネス社) (まとめ/本誌・亀井洋志) ※週刊朝日 2020年12月11日号
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多額の財政出動で、国民の命と財産を守るのが政治だろう。
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