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大阪の医療体制が「非常事態」に至った。大阪府の吉村洋文知事は3日、新型コロナウイルスの感染拡大の状況が、独自基準で最悪の「赤信号(レッドステージ)」に達したとし、不要不急の外出自粛を府民に要請した。感染抑止と経済の両立を図ろうとしてきた吉村知事が、基準(重症病床使用率70%)に達する前に、点灯に踏み切った背景には、予想以上に病床確保が難航している実態がある。 「重症病床の使用率はいずれ70%に達すると見込まれる。先んじて、今は赤信号のボタンを押すべき時期だと考えた」。3日の記者会見で、吉村知事は決断の理由に病床の状況の好転が見込めないことを挙げた。 11月27日に大阪市の一部の飲食店に時短営業を要請してわずか1週間だが、状況は日々悪化している。要請時点で107人だった重症者は3日時点で136人。確保を見込む206床の重症病床の使用率は、66%と15ポイント近くも上がった。 実情はさらに厳しい。206床にはコロナ用に確保したものの、他の患者が入院中のものも含まれ、即座に使用できる病床(運用病床)は164床と少ない。 「何か手を打たないといけません」。医療分野を担当する府幹部らが知事に迫ったのは2日夜。庁内に「時短要請の効果を見極めても遅くない」との空気もある中、決断を求めたのは「その余裕はない」とする現場の危機感からだ。 府は感染拡大が顕著となった11月以降、事前計画に沿って、医療機関に段階的に運用病床を増やすよう要請。同9日には150床、同19日には最大限まで増やすよう呼びかけた。 しかし当初の101床から増えたのは約60床分。運用病床のうち使用中の割合(運用率)はこの1週間、80%前後で推移している。 重症者数の増加は、感染のピークから15日程度遅れる傾向があるが、今後の1週間で積み増せる見込みの病床は数床にとどまる。 「誤算」の一つが、冬場になり心疾患や脳疾患などコロナ以外の重症者が増えたことだ。要請から1~2週間で病床が空く想定が、今はまだ2割が使えない。 医療スタッフの不足も顕在化してきた。 5月から中等症患者の専門病院となった大阪市立十三市民病院では看護師ら20人以上が退職。90床を運用できる予定が、今は60床にとどまる。市は市立総合医療センターから看護師を派遣する方針だが、その余波で同センターでは「AYA(アヤ)世代」と呼ばれる若い世代のがん患者の専用病棟が一時閉鎖されることになった。 府が整備した重症者を治療するプレハブ病棟「大阪コロナ重症センター」(約60床)の稼働も遅れている。秋の開始をめざしていたが、今月15日にずれ込んだ上、30床分の運用に必要な看護師約130人に対し、確保のメドが立っているのは50人だ。 中等症患者を受け入れる市内の病院関係者は、「重症化しても転院先がなかなか見つからない」と不安を明かす。これまでは酸素吸入が必要な段階で転院させられたが、今は受け入れ先がなく、容体急変に神経をとがらせながら、空きを待つことが増えたという。 赤信号の点灯を決めた府の対策本部会議の後、出席していた幹部は「効果が出るのはこれから2週間後。府内の医療体制はこれからも綱渡りが続く」と厳しい表情で話した。
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危機感を持たないと、他の地域も、いずれ大阪と同じになるだろう。
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