なぜこんなことになってしまったのか。ロシアのプーチン大統領の暴挙が止まらない。AERA2022年3月14日号に、池上彰さんがこの現況を受け、寄稿した。
* * * まさか21世紀になって、こんな光景を見ることになるとは。驚きと共に無力感に駆られる日々だ。 ロシアのプーチン大統領の暴挙には、国際社会も非難の声を上げているが、その声は届きそうもない。それどころかプーチン大統領は核兵器の使用すらちらつかせて反発している。 ロシアの暴挙以降、「なんとかならないんですか」という質問を多くの人から受けている。「国連は何をしているんですか?」と詰問されることすらある。 それには、「国連の安全保障理事会には5カ国の常任理事国があって、拒否権を持っていることを学校の社会科で習ったでしょう」という答えしか持ち合わせていないことにも無力感を覚えるし、罪悪感すら持ってしまう。 核を脅しに使う国家元首がいまもいるという現実は、「核廃絶」を訴え続けた日本の努力を虚しいものにしてしまう。 ロシアの暴挙に関しては、ロシアの南下政策に対する周辺国家の恐怖心や、国境の向こうに緩衝地帯を設定しなければ安心できないロシアの特異な危機意識など、地政学の観点で分析できることは多々あるだろう。それらは、他の論文を参照いただくとして、いま後悔することは、ロシアの数々の暴挙に、もっと前から国際社会が毅然たる態度を取るべきだったということだ。 2014年にロシアがクリミア半島を併合したときに、国際秩序を力で変更することには多大な犠牲を伴うことを、もっと知らしめる必要があった。 それだけではない。イギリスに亡命したロシア人が不審死を遂げたり、襲撃を受けたりという事件が相次ぎ、背後にプーチン大統領の影がちらついていたのに、疑惑の人物が国家元首であることから、国際社会が遠慮していた経緯がある。 たとえば06年。ロシアの元情報将校アレクサンドル・リトビネンコ氏は、亡命先のイギリスで、放射性物質ポロニウム210を飲み物に入れられて毒殺された。ポロニウム210は、一般の人が入手できるものではない。原子炉がなければ精製されないものだ。バックに国家の存在があることは明らかで、イギリスは容疑者を特定し、ロシアに身柄の引き渡しを求めたが、ロシアは拒否した。イギリスの調査委員会は、殺害計画をプーチン大統領が「おそらく承認していた」という報告書を公開している。
たとえば18年。ロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんがイギリスで殺害されかかった際に使われたのは、旧ソ連時代に開発された神経剤ノビチョクだった。ノビチョクは、20年にロシア国内の反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏に対しても使われている。
旧ソ連製の神経剤の存在が暴露されても、抜け抜けと使い続けるという無神経さ。いや傍若無人の残酷さ。どうせ国際社会は何もできないだろうと嘲笑う人物の顔が浮かぶ。
世界は新たな時代を迎えた。世界史の大きな転換点を迎えたいま、私たちは何を考えればいいのか。(寄稿)
**************************************************************
確かに驚きと無力感しかない。プーチンの暴挙、大量虐殺をなぜ止められないのか。
0 件のコメント:
コメントを投稿