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元参院議員の男(79)が、現職国会議員に成り済まして新幹線のグリーン券をだまし取ったなどとして逮捕された。男が悪用したとされるのが、国会議員に与えられる鉄道乗車証(通称・JR無料パス)。公務であれば新幹線や在来線が乗り放題で、過去にはパスに絡んだ不祥事もあった。紙によるアナログな利用システムにも課題があったといえ、議員経験者は「このままでは有権者の信頼を失う」と危惧する。 愛知県警は10日、詐欺と有印私文書偽造・同行使の容疑で、岐阜県中津川市の会社役員、山下八洲夫(やすお)容疑者を送検した。山下容疑者は旧社会党衆院議員を経て、平成10年の参院選で当選し、22年に落選した。事件まで立憲民主党岐阜県連の常任顧問を務めていたが、解任されることが決まった。 県警によると、送検容疑は4月27日、国会議員用の申込書に現職議員の名前を記入して東京駅の駅員に提出し、東京―名古屋間の新幹線特急券・グリーン券をだまし取ったとしている。 発券の前に、容疑者自身が過去に使っていた公務用のJR無料パスを見せ、駅員をだましていたとみられる。捜査関係者によると、「(無料で新幹線に乗れた)議員時代のことが忘れられなかった」とも話しており、不正乗車を繰り返していた可能性がある。 ■利用記録なし、チェック体制に不備 無料パスは歳費法に基づき、「職務の遂行に資する」目的で国会議員に交付される。公務であればJR各社の新幹線や在来線で使用でき、東京と地元を何度も往復する議員の政治活動を支えている。 有人改札で駅員にパスを提示すれば駅構内に入場が可能。グリーン車も利用でき、この場合は申込書を駅員に提出すれば、グリーン券が受け取れる。 有効期限は1年間。衆参事務局が年度ごとに議員らに希望を聞きJR側から購入しており、両院は今年度予算で計約5億円を計上している。 参院事務局によると、有効期限が過ぎれば返却を求めている。落選・辞職した場合でも同様だが、捜査関係者によると山下容疑者は「落選後も継続的に(パスを)使っていた」と供述した。 パスの大きさは名刺程度。議員の氏名や有効期限が記入されているが、顔写真はない。利用時の本人確認について参院事務局は「JR側に任せている」と説明。また議員の個別の利用記録も存在せず、パスの返還率も公表していない。パスの利用実態は不透明な部分が多く、こうしたアナログ的な利用方法を含め、チェック体制に不備があった可能性もある。 ■過去にも不適切使用、再発防止策を 過去には無料パスの不正利用が問題視された例もある。平成21年には故鴻池祥肇(よしただ)官房副長官(当時)がパスを使って知人女性と旅行したと週刊誌に報じられ、辞任。昨年4月には、山尾志桜里衆院議員(当時)もパスの不適切使用が報じられ、自身のツイッターで謝罪した。 「特権だ」「国民感覚からかけ離れている」と批判を集めやすい無料パス。かつては議員が全国の私鉄を無料利用できるパスもあったが、ICカードの普及や「運賃負担の公平性から利用者の理解を得にくい」との議論もあり、平成24年9月に廃止された。 元議員は騒動をどう見るのか。元衆院議員で東京地検特捜部副部長を務めた若狭勝弁護士(65)は、今回の事件について「悪質だ」と強く非難する。 議員時代には、別の議員が女性との私的な旅行に無料パスを使用したとの噂を耳にしたことがあり、「私的な用事でパスを使ったとしても、政治活動に関係すると強弁してしまえば、すべてあいまいになってしまう」と若狭弁護士。使用は直接的な政治活動の場面に限るといった再発防止策が必要との認識を示し、「このままでは国会議員に対する国民の信頼は失われてしまう」と懸念した。(前原彩希)
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問題の文書交通費もあり、私的利用に悪用される無料パスは廃止すべきでしょう。
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