2019年7月の参院選を巡り、現金を受け取った100人全員を不起訴とした検察の判断は、従来の選挙違反事件の処分と比べて公平性を欠くと言わざるを得ず、日本の選挙のあり方にも禍根を残しかねない。
公職選挙法は被買収罪の法定刑を買収罪と同じ「3年以下の懲役」などと規定している。現金を受け取る行為が、それを渡す行為とともに、民主主義の根幹を揺るがす重大な選挙犯罪と位置付けられているからだ。
過去には数千円程度の受領で訴追され、有罪が確定したケースもある。ところが、今回は300万円を受け取ったケースでさえも、刑事責任は問われなかった。これでは「今後は100万円単位でも起訴されない」と誤解する者も現れかねない。
検察は一律不起訴の理由を「いずれも受動的だった」と説明したが、100人のうち40人を占める地元政治家らは選挙に精通し、一層の順法意識が求められる立場だ。被買収の事実が発覚しても、「押し付けられたから」で不起訴となるなら、公職に対する有権者の信頼は根底から損なわれる。
検察は今回、国会議員と地元政治家が現金提供で結びつき、有権者の投票行動を誘導しようとする「腐敗の構造」に切り込んだはずだ。今回の処分でその土壌が温存されるなら、「主犯」の摘発もかすんでしまう。
検察は10年余り前に起きた大阪地検特捜部による証拠改ざん事件を機に「検察の理念」を定めた。そこでは「厳正公平」や「不偏不党」とともに、独善を排する姿がうたわれている。今回の処分が理念にかなっているか、検察官一人一人が自問してほしい。(都梅真梨子)
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渡す人よりも、受け取った人の方がより悪質でしょう。
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