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7日夜、首相官邸。その週末に期限を迎える東京都などへの「まん延防止等重点措置」を延長するのか、それとも緊急事態宣言に強化するのか。菅義偉首相が前日に続いて、関係閣僚を集め協議していた。 「専門家は、首都圏への宣言を求めています」。西村康稔経済再生相は、一同にそう説明した。首相らの手元には、宣言の期間を1カ月とする案と、8月22日までの6週間とする案の二つのシナリオが記された資料が配られた。7月23日の五輪開会式など、その間の日程も付記されていた。 「これで最後の宣言にしたいと思います」。西村氏はそうも語り、感染状況を十分改善させるため、長期の宣言が望ましいとの見方を示した。7日の東京の新規感染者数は、1週間前より200人以上多い920人に跳ね上がっていた。前日までくすぶっていた重点措置の延長論は勢いを失い、全員一致で東京に4度目の宣言を出す方針が定まった。 この2日間の協議で、首相の口数は少なかったという。方針が決まった後には、周囲に淡々とこう漏らした。「もう、しょうがないよね」 五輪を目前に、開催都市・東京に緊急事態宣言を出す。それは、首相にとって何としても避けたいシナリオだった。「コロナに打ち勝った証し」として五輪を成功させ、祝祭ムードのなかで衆院解散・総選挙に突入し、国民の称賛を勝ち取る。昨秋からこだわり続けたシナリオの根幹が、瓦解(がかい)することになるからだ。 首相ら政権中枢は、「安心・安全な五輪」の実現に向け手を尽くしてきたはずだった。6月20日までで3度目の宣言を解除し、重点措置に切り替えたのも、感染状況をコントロールできるとの自信ゆえだ。国民に感染防止対策で協力を求め、五輪の「有観客」を実現する。首都圏の感染者数が多少増えても、重症者数が増えることはない。ワクチン接種が加速し、五輪が始まるころには効果が表れるはずだ――。この間、政権中枢にいる面々の多くは、そんなことを語っていた。 その目算は、ことごとく崩れつつある。 8日夜、4度目の宣言発出を決めた後の記者会見で、首相は「先手先手で予防措置を講ずることとした」「必ず安心の日常を取り戻す」と力を込めた。会見後、周辺に「感染状況はこれから良くなる」「宣言は今回で最後だ」と、なお政権のコロナ対応に自信を示したという。 だが、いま東京の感染再拡大は急激に進み、重症病床の使用率も感染爆発の「ステージ4」の水準に迫る。政権が最優先してきた五輪の実現を前に、暮らしの安心・安全が脅かされている。それが、東京の現実だ。
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常識的に考えたら、浮かれて五輪をやっている場合ではない。
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