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大谷翔平のMLBオールスター・ゲーム初出場は、間違いなく成功に終わった。 確かに、目に見える結果を残したわけではない。日本人初出場となったホームラン・ダービーで優勝できていたら、あるいはオールスターで本塁打を打つことができたら、100マイル(約160キロ)の速球やスプリッターで球界屈指の強打者を三振に斬っていたら……。そんな“タラレバ”は付きまとう。 だが、そのいずれも大谷には必要なかったのだ。たとえヒットを打てなくても、彼は新たな歴史を作った。そして、球界全体が、このオールスターでようやく大谷の真価を認識したように見える。 メジャー最初の3年間は、怪我や技術的な問題もあってベストコンディションを保てず、ファンや関係者の間では二刀流への懐疑論も出ていた。今シーズンの開幕時点でさえ、大谷の才能に疑問の眼差しを向ける者は少なくなかった。 しかし今、あらゆる懐疑論や疑念はすべて消え去った。 オールスター前日、出場選手たちはそれぞれ椅子に座り、約1時間にわたって記者からの質問に答えた。彼らはこぞって大谷を褒め称えた。 「彼をテレビで見ていると、本当に信じられない気分になる」 アトランタ・ブレーブスの一塁手フレディ・フリーマンはそう言い放ち、こう続けた。 「彼はベースボールを変えようとしている。二刀流をやってみたいと思う人たちのために道を切り開いているんだ。他にそんなことができる人がいるのかは分からないけどね。彼がしていることは信じられないほどすごいことさ」 さらにセントルイス・カーディナルスの三塁手ノーラン・アレナードが、「自分が今まで見たこともないようなことをやってのけている。ベーブ・ルース以来誰もいなかったんだ。彼のような選手がいてくれて、本当に素晴らしいね」と称えれば、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドは記者たちへの挨拶で次のように言及した。 「ショーヘイ・オオタニがこれまでやってきたことはすでに語り尽くされていて、新しい言葉など文字通り何も想像できない。それ自体が彼の素晴らしさを雄弁に物語っている。信じられないほど素晴らしいパフォーマンスだ」
最も印象的だったのは…
惜しくもホームラン・ダービーでは、1回戦でホアン・ソト(ワシントン・ナショナルズ)に敗れた。それでも、クアーズ・フィールドの最上階席にぶち込む飛距離500フィート以上の特大弾を6本も放ち、5万人を超える観客を熱狂させた。 翌日のオールスター・ゲームでは、史上初めて「1番DH・先発投手」として出場した。打撃では2打席ともゴロアウトに終わった一方、マウンドでは1イニングを無失点に抑えて勝ち投手になった。 私にとって最も印象的だったのは、レギュラーシーズンの試合では球速を抑えて投げている大谷が、このオールスターでは明らかに違う投球を見せたことだった。 1イニング投げたに過ぎなかったが、100マイルを2度も計測した。これは、長いイニングを投げるために体力を温存させる必要がなかったのと同時に、ファンに見せ場を提供したいという気持ちがあったからだろう。 「思い切り投げました」 そう言った大谷は明らかにスポットライトを楽しんでいた。DHとして出場するだけでも十分だったはずだが、彼はホームラン・ダービーにも出場し、先発マウンドにも立った。 疲労について懸念はないのかと私が訊ねた時、「疲れることは分かっていた」と彼は答えた。しかし、ファンがすべてを望んでいることを本人は知っていた。そして、ファンに喜んでもらいたいと思っていたのだ。 「たくさんの人が楽しみにしていると思うので、期待に応えたいと思います」 そう語っていた彼は、実際に期待に応えてくれた。そのことを、私は嬉しく思う。 文●ジェフ・フレッチャー 【著者PROFILE】 ロサンゼルスの地元紙『オレンジカウンティ・レジスター』の番記者。2013年からエンジェルスのビートライターを務め、殿堂入り投票権も持つ。ツイッターアカウントは@JeffFletcherOCR。
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ファンサービスは素晴らしいも、疲労蓄積の故障が怖い。
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