「発信力」より「安定感」が決め手になった。
出身派閥・宏池会から首相が誕生するのは、宮沢喜一氏以来30年ぶりだ。岸田氏はくしくも、政権交代で宮沢内閣が退陣に追い込まれた1993年衆院選で初当選している。
新型コロナウイルスの感染拡大で世間がささくれ立つ中、岸田氏は「聞く力」をアピールし、「寛容さ」を掲げた。論戦で目立った失点はなく、外相を4年7か月にわたって務めた経歴も評価につながったようだ。
ただし、党員・党友票では、河野氏にもっとも多い支持が集まった。岸田氏は真摯(しんし)に受け止めねばならない。
岸田氏は西郷隆盛を尊敬しているという。西郷に影響を与えた『言志四録』には政治の極意として、「果(果断)なれども暴(乱暴)ならず」との一文がある。
時に、強い指導力と決断を迫られよう。他方、総裁選で訴えた「自分が正しいと国民をねじ伏せるのではない、丁寧で謙虚な政治」の実践が大切だ。菅首相に足りなかった説明を尽くす努力も忘れてはなるまい。
まずは、経済、外交・安全保障……待ったなしの難題に対処する党役員・閣僚の布陣構築だ。論功行賞、順送りではなく、政治家と官僚が適切に役割分担し、政策を遂行できる態勢を整える必要がある。「チーム力」を強調する岸田氏の手腕の見せ所ではないか。
コロナ対策では、ワクチン接種が進み、感染者数は急減しているものの、「第6波」への懸念は拭えない。医療崩壊を繰り返さないため、政府、自治体、医師会などに踏み込んだ協力を促すことも重要だ。岸田氏の人間力が試されよう。
人口減、少子高齢化が進み、外に目を向ければ中国の台頭が著しい中、将来を見据えた国の全体像を示すことも欠かせない。
11月前半に衆院選が行われる見通しだ。「岸田流政治」はさっそく、有権者の審判を受ける。
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旧態依然の派閥の力学にしらけています。
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