「在宅療養者に向けた酸素や薬が不足し、医師が訪問診療するのにも限界があります。中等症の患者を集約し、治療ができる『臨時医療施設』を(都に)造っていただきたい」 8月31日、東京都医師会の臨時記者会見で、尾崎治夫会長(69)は、声高に訴えた。尾崎会長は、東京都東久留米市の「おざき内科循環器科クリニック」の院長。都医師会会長を2015年から務める。 「東京五輪・パラリンピックの開催や『GoTo』政策に異議を唱え、その “正義漢” ぶりがSNSなどでも支持を集めています」(社会部記者) 尾崎会長は、臨時医療施設を “野戦病院” と称し、緊急性や危機感を強調。小池都知事に開設を迫っている。尾崎会長は、コロナから国民を守る “救世主” なのか――。 ある政府関係者が語る。 「尾崎氏は救世主ではありません。小池都知事に『(医師の)人材はなんとかする。建物を造ってくれ』と主張していますが、我々は尾崎氏ら医師会が本当に協力するのか、疑わしいと考えます。 いま、野戦病院よりも早期に設置でき、よりきめ細かな治療ができる『酸素・医療提供ステーション』が、築地市場の跡地や『都民の城』(渋谷区)に相次いで開設されています。 しかし、都医師会からの開業医の協力はわずかで、現場は大学病院の医師が大半なのです」 都医師会の会員約2万人のうち、開業医は約半数。だが、開業医が執行部をほぼ独占し、政府から有利な制度を引き出している。ワクチン接種にかかわる医師の待遇が象徴的だ。 「大規模接種会場で、ワクチン接種に従事する自衛隊医官への手当が1日3000円であるのに対し、開業医は1日50本ワクチンを打つと、1本あたり2070円の診療報酬に加え、10万円の協力金が支給されます。なお7月までは、60本打てば、1日に17万5000円が支給されました。しかし、その一方で、医師会やその “配下” のクリニックの大半は、コロナ診療には非常に消極的なのです」(前出・政府関係者) 消極的なのは、尾崎会長自身も例外ではないという。 「尾崎会長のクリニックは、午前中の診療時間をわずか2時間に縮小し、ワクチン接種を拡大させています。年間では、2000万円近い協力金を得ることになるでしょう。しかも、陽性者への対応は一切していません」(同前) 本誌が、都医師会に質問状を送ったところ、尾崎会長本人から回答があった。 ――ワクチン接種の協力金で儲かっているのか? 私のクリニックでは、1日平均60本のワクチンを接種してきました。11時から13時までは、ほかの診療をストップせざるを得ません。通常診療や市の検診なども制限しておこなっています。 収入は通常診療が減り、ナースや事務員を増員したため人件費がかさみ、補助金をもらっても1~2割は収入減になるというのが現状です。 ――なぜ、コロナ患者を受け入れないのか? 毎日、5~10件の発熱患者さんを診ています。8月以降は、陽性率が50%を超える日も珍しくありません。保健所に報告するための情報をすべてお聞きし、感染防護をしながらPCR検査をおこなうには、一人最低15~20分はかかります。 そのうえ、接種者を厚労省に報告するデータ入力作業も加わります。昼休みも削られ、クリニックの電話は鳴りっぱなし。毎日、私たち夫婦やスタッフは疲労困憊で、ただただ忙しく飛び回る毎日が、もう何カ月も続いています。 多くの診療所の医師は、コロナの患者さんを見捨ててはおけない、という思いがあります。ただ、患者さんの半数が未接種である現状では、時間的、空間的に動線を分けられる診療所でないと、コロナ診療は難しいのが現実です。 ――“野戦病院” の設置を訴えながら、すでにある臨時医療施設に非協力的な理由は? 都民の城や築地市場の跡地に開設された臨時医療施設などについても、昼間はすべて地区の医師会の先生方を派遣しています。協力が少ないというのは、誤報あるいは誤解だと思います。 これとは別に、自宅で苦しんでいる中等症の患者さんをしっかり診られる、酸素および薬物治療のできる臨時医療施設(野戦病院)も必要性が高いということで要望しています。こちらも造ることが決まれば、多くの先生に協力していただけると確信しています。〈※回答はここまで〉 臨時医療施設への都医師会の協力状況について、具体的な数字を求めたが、同会広報課は「集計していない」とのことだった。 回答から垣間見えたのは、“救世主” ではなく、ウイルスに翻弄される一人の開業医の姿だった。
(週刊FLASH 2021年9月28日・10月5日号)
*************************************************************
日本の医療制度を根本から変えないとコロナ対応は不可能のようです。
0 件のコメント:
コメントを投稿