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ワクチン一本足打法が招いた病床逼迫
8月13日には、1日当たりの新規感染者数が2万人を突破。感染の拡大に伴い、入院ができず自宅療養を強いられる患者も増加した。8月22日には、東京都の入院調整者数は1万4,726人を記録。さらに、入院できず、自宅療養中に亡くなる事例も相次いだ。 「菅政権は、医療提供体制が危機的な状況に陥り、『中等症は自宅療養』という方針を出しました。そもそも多くの専門家が指摘してきたとおり、入院施設が足りなくなることは自明。本来なら、病院以外の入院施設を準備するなど、軽症患者の受入れ先を確保しておくべきだったのです。けれど、聞く耳を持たない菅首相はワクチン接種さえ進めばなんとかなると考えていたのでしょう。そのために、最初の緊急事態宣言から1年以上もの間、他の対策が疎かになってしまったのです」(田中さん) 厳しい現実といえば、感染力の強いデルタ株への対応もおそまつだったという声もある。 「菅首相は、ワクチン接種が加速すればすべてが好転し、あわよくば選挙にも勝てると感じていたのかもしれません。しかし、デルタ株の強い感染力により、ワクチン接種が始まってからも感染は拡大。海外からは、ワクチン2回接種後にも感染するブレークスルー感染の報告が相次ぐようになります。その結果、8月17日になってやっと、菅首相は“医療体制の構築” “感染防止の徹底” “ワクチン接種”という3つの新しい対応策を示しました。今さら感がある対応策に、菅首相がデルタ株を甘く見ていたことを多くの人が知ることになったのです」(山下教授) これらをふまえ、第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣さんも、次の政権では医療体制の拡充が必要だと指摘する。 「ワクチン接種が進んでも、変異株がある以上、医療提供体制を拡充しないと、いつまでたっても行動制限は解除されないでしょう」
五輪開催によって分断された国民
本来なら国民の心を一つに結束させるはずだった五輪だが、開催の賛否を巡り「国民分断」の原因に。大会ボランティアが、罵声を浴びるなどの事件も発生した。 毎日新聞が行った世論調査では「五輪開催がコロナの感染拡大に影響したか?」という質問に「大きく影響したと思う」「多少は影響したと思う」と答えた人が7割を超える。 「『東京オリンピックはやる』けれど『国民は引き続き我慢してね』なんてことが、全国民に受け入れられるはずがありません。せめて、開催の意義や理由をしっかりと説明するべきでした」(山下教授) さらに、そもそも、政府は今年の実施にこだわっていなかったのではないかと山下教授。 「今年開催にこだわるなら、もっと早くに開催を決定し、周知し、オリンピックへの国民の協力を促していたはずです。結局のところ、開催判断をずるずる引き延ばしているうちに、中止や延期の選択肢を失ってしまった。その結果開催されたのが、今回の五輪なのでしょう」 コロナの再拡大と同じタイミングで開催された東京五輪。やり遂げれば、支持率アップの期待もあったと言われているが……。 「国民からしたらそんなことはありえない。でも、菅首相の周りはイエスマンだらけだったため、反対の声はもみ消され、よい話ばかりが届けられたのでしょう。そうやって強行された五輪は、国民の命を脅かしたうえに、経済の足かせにもなりました」(山下教授) 山下さんは、ここまで見てきたような菅政権の失敗は、政権発足当初から続く、周りの意見を聞かない菅首相の姿勢に原因があると続ける。 「思い出してほしいのは、昨年9月の日本学術会議の任命拒否問題です。菅首相は、日本学術会議が推薦した人文系の大学教授6人の任命を拒否しました。この1年の失策の根本原因は、異論反論を許さずに、周囲には自分に同調的な人間だけを置いて政権を運営してきたことによるもの。その結果、必要な情報が手に入らず、誤った判断を下すことにつながったのです」
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周りや国民の意見を聞かない、国民にきちんと説明しないことが、失敗の原因でしょう。時間が経てば、国民は都合よく忘れると思っているのでしょう。
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