静岡県熱海市の伊豆山地区で7月3日に発生した土石流災害について、静岡大学の小山真人教授(火山学)が現地調査を行った。小山教授は「崩壊したのは造成地の埋土(盛り土)の一部」と結論づけた上で、「まだサラサラした大量の埋土が現場に残されている。今後ふたたび大雨が降った場合の土砂流出や土石流発生が心配だ」と話す。 静岡県によると、同地区で発生した土石流は、逢初(あいぞめ)川の最上流部(海岸から約2キロ上流)の標高約390メートルから流れ下った。被災した範囲は延長約1キロ、最大幅約120メートルにわたり、7月7日午後8時時点で被害にあった建物は約131棟、死者7人、安否不明者27人を数える。
自然のままの地盤は火山岩類からなるが…
小山教授は7月5日、「何が崩れて土石流が発生したのか」「今後も崩壊しそうな土石がどの程度残っているのか」を明らかにする目的で、現地調査を実施した。源頭部(土石流の起点となった部分)の崖になっている場所を、規制線の外側から目視で観察した後、造成地周辺の地質調査や崩壊地周辺の地形分析を行った。 小山教授によると、土石流が発生した場所の地山(人為的な手が加えられていない自然のままの地盤)は、溶岩と火砕岩が重なり合った地層を主体とする火山岩類からなっている。このうちの火砕岩は、緻密な溶岩部分に比べて風化しやすく、風化が進むと褐色や赤褐色になってもろくなり、最終的には粘土化するという。一方の溶岩部分については、丸みを帯びた形状の大きな岩石となることもある。
現地調査前の現地映像を見た段階で、崩壊した部分に「黒く見える部分」と「褐色に見える部分」があったことから、「黒い部分は埋土、褐色の部分は地山の火山岩類だろう」と考えていたという。しかし、現地調査後に、自ら撮影した写真を分析すると、いずれの部分も粘土質ではなく、砂や小石などからなる砂礫(されき)質で、地山の特徴である火山由来の地層ではなかった。
さらに静岡県による崩壊した場所のドローン動画も分析。どこにも地山の地層は露出しておらず、露出していれば見られたであろう大きな転石もなかった。
こうしたことから、小山教授は「崩壊は地山に達しておらず、造成部分の埋土だけが崩れた。何かあれば下に影響が出てしまうようなところに土を埋める場合は、相当しっかり地下水対策を行う必要があるだろう。規制を今以上に厳しくすることも必要ではないか」と話している。
崩れやすくなっているように見える場所も
なお、崩壊前後の地形図を見比べて計算した結果、崩壊量はおよそ5.5万立方メートル(静岡県推定は約5.4万立方メートルとほぼ同じ)。さらに、源頭部の南西側に崩れやすくなっているように見える場所があるとして「今後ふたたび大雨が降った場合が心配」と危惧する。
「盛り土が甚大化させたことはほぼ間違いない」
報道によると、静岡県の難波喬司副知事は7日の記者会見で「盛り土が(被害を)甚大化させたことは、ほぼ間違いないと思う」と話し、過去に、盛り土に関わった事業者に対して県などが是正指導をしていたことを明らかにしている。
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埋め立てした建設残土や産廃だけが崩壊したとすれば、人災でしょう。
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