3日昼の自民党臨時役員会で党総裁選(17日告示、29日投開票)への不出馬を表明した菅義偉首相。事実上の辞意は、あまりにも突然の決断に見えた。2日夕に会談した二階俊博幹事長には出馬の意思を伝達。二階氏は首相の意向について「今朝聞いた」と話した。就任から約1年。戦闘モードに入っていた首相の退陣の真相とは――。
党役員人事の一任を取り付けるはずだった役員会でまさかの不出馬表明。6日に予定していた人事も実施しないと述べた。その直前に党本部で二階氏らと向き合った首相は「気力を失いました」と辞意を伝え、「うそだ」と声を上げる二階氏らに「決めたんだ」と慰留を拒んだ。これに先立ち、官邸で面会した麻生太郎副総理兼財務相には「正直、しんどい」と漏らした。
官邸に戻った首相は記者団には「コロナ対策と総裁選の選挙活動には莫大(ばくだい)なエネルギーが必要で、両立できない。感染防止に専念したい」と述べた。ペーパー棒読みではなくカメラに目を向け一方的に話した2分間。コロナ対応を理由にし、白旗とは認めなかった。記者会見を来週開くという。
終わりの始まりは8月22日の横浜市長選。選挙で負け続きの中、お膝元で全面支援した候補が惨敗、「首相では戦えない」との空気が充満し、総裁選再選がおぼつかない政治的な緊急事態に陥った。
後手対応が代名詞だが、局面打開へ先手、先手で攻勢。総裁選に手を挙げた岸田文雄前政調会長が菅批判票や反二階票の受け皿となっていく中、同31日に「禁じ手」「異例中の異例」といわれる総裁選前の人事に着手。さらに、劣勢の総裁選先送りを狙った9月中旬解散という暴挙まで画策。翌日、解散を打ち消したが、時すでに遅し。「個利個略」などの批判が噴出、若手ばかりか領袖(りょうしゅう)クラスの間でも菅離れが加速した。
最後の望みとして人事に執着。幹事長など4役の刷新を目指し、人気の高い河野太郎行政改革担当相(麻生派)や小泉進次郎環境相(無派閥)らの取り込みをもくろんだ。しかし、各派とも人を出し渋り人事は難航。「先手のつもりが独断専行が過ぎ、各派総スカンで事実上の菅降ろしの状況となった。自滅だ」(自民党関係者)。
もはやレームダック(死に体)と化した首相。再選支持を明言し、この日まで5日連続で首相と会っていた小泉氏は記者団に「現職の首相が(負けて)ボロボロになってしまったら、やってきたいいことすら正当な評価が得られない」ことを危惧、「あらゆる選択肢をご意見した」と述べ、不出馬の進言をしたことを示唆した。一方、河野氏の処遇を巡り、首相と麻生氏が2日夜に電話で激しい応酬を繰り広げたとの情報が永田町を駆け巡った。首相支持の意向とされた麻生氏だが、麻生派がまとまらない中での河野氏の一本釣り。河野氏の後継指名まで話が及び、麻生氏が「辞めろ」と迫ったという「麻生氏引導説」まで飛び交った。
人事断行に対する反対意見はさらに強まっていて、役員会での一任取り付けは厳しいとの見通しも伝えられていたようで、悪あがきは詰んだ。地元の神奈川県連が菅推し運動はしない方針を固め、戦意もそがれていった。
国民の気持ちばかりか党内の空気さえ読めなかった首相。コロナ下の政治空白につながる混沌(こんとん)とした状況だけが残った。
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策士ゆえの独断専行がすべてをダメにしたのでしょう。
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