加害男性からは、事件後毎年手紙が送られてきており、事件から18年となる今年5月にも、手紙が届いたばかりだった。
「手紙を読むことはつらい。それでも、私たちは子供に対する義務だと思い、手紙を読み、『事件のときのことをもっと知りたい』と声を上げてきた」
しかし守さんの思いは裏切られた。加害男性からも、出版社からも、何の連絡もないまま、突然手記が出版された。
「事件の詳しい状況や加害者の心境は遺族だけに伝えればいいこと。本を読むことで、事件を知らなかった多くの人が、私の子供が残酷な殺され方をした事件のことを知る。私たちの心は傷つき、二次被害、三次被害を受ける」
「絶歌」を出版した太田出版(東京)は、発売後の17日にホームページ上で見解を発表、「少年犯罪を考える上で大きな社会的意味があると考えた」と主張するが、守さんは「これほど特異な事件の内容を社会に知らせても、普遍的な意味はない。売ることだけを考えている」と反論。抗議書を出し、回収を求めている。
事件後、守さんは「全国犯罪被害者の会(あすの会)」の活動などを通じて、少年犯罪の情報開示などを求めてきた。しかし今回、加害男性が「元少年A」の作者名で本を出したことに、「32歳の責任ある成人男性が、少年法の陰に隠れて匿名で本を出し、遺族を傷つける。卑怯(ひきょう)だ」とも憤る。
加害男性は医療少年院に約6年入所し、その後、更生したとして退院した。弁護士らのサポートチームが支援を続けてきた-とされていたが、「絶歌」では、17年に支援から離れて暮らすようになった-との内容が書かれている。こうした情報は手紙にはなかったという。守さんの不信感は募るばかりだ。「事件直後の心境に戻った。本当に更生しているのなら、こういう本を書けるはずがない。更生にかかわった人たちの認識も甘い」と話す。
加害男性側は、関係者を通じて「絶歌」の出版後に改めて手紙と本を守さんに渡そうとしたが、守さんは受け取らなかった。もとより「本を読む気は全くない」という。
出版の自由や表現の自由との間で、取り扱いの難しさを問う声もあるが、守さんは「自由といっても、何をしてもいいということではないはず。被害者や遺族の人権は侵害されている。加害者の出版の権利を守るのではなく、被害者の人権を守ってほしい」と訴えている。
今回、地元の兵庫県の公立図書館が本を購入しなかったり、書店が取り扱いをしなかったり、遺族へ配慮する動きも出始めている。同県明石市の泉房穂市長は、市内の書店に配慮を求めた。こうした動きを守さんは「ありがたい」と評価しており、「一刻も早く回収してほしい。また犯罪の加害者が、自分の犯した罪のことを手記にして出版する、という行動も規制してほしい」と話している。
(産経新聞)
規制しないと、凶悪犯罪を犯し、出所後に手記出版なんて輩が増えるのだろう。
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