賛成五、反対四。日銀の最高意思決定の場である金融政策決定会合の票数がすべてを物語っている。正副総裁の三人を除けば審議委員の大半が反対したのである。
マイナス金利の導入について黒田東彦総裁は、つい十八日の国会答弁も含め一貫して否定してきた。それが一転、「量的・質的緩和に金利を加えた三次元緩和によりデフレマインドを払拭(ふっしょく)したい」と言説が変わった。量的・質的緩和の限界を逆に印象づけた。
マイナス金利は、民間銀行が日銀の当座預金に預けるお金の金利(付利)をマイナスにすることで、日銀預金をやめ企業への貸し出しなどを促す狙いだ。金利が一段低下するが民間銀行は利ざや縮小で収益が減る。このため貸出金利の引き上げに動き、かえって実体経済を悪化させるおそれがある。
そもそも、これだけ超低金利の資金をあふれさせても企業の資金需要が高まらないのだから、マイナス金利による貸し出し増の効果などは限定的ではないのか。
それでも日銀がマイナス金利に踏み切らざるを得なかったのはなぜか。それは物価上昇目標の達成時期を先送りするのに何も追加緩和策をとらなければ、政策の本気度が疑われるからだろう。
これまで「二〇一六年度後半」としてきた達成時期を、今回は「一七年度前半」に先送りした。当初の「二年で2%の物価上昇目標」は「四年で2%」となる。ずるずると先送りを繰り返すだけでは、日銀の金融政策への信頼が失墜しかねない。すでに昨年十月に、達成時期を先送りしながら金融政策を維持したことで、市場から「異次元緩和は論理が破綻した」と批判が出たのである。
日銀は今回、同じ轍(てつ)は踏まないよう「目先を変える追加緩和策」を講じるとともに、三月の追加金融緩和を示唆している欧州中央銀行(ECB)と歩調を合わせ、国債などを大量購入する量的緩和策の拡大を行う可能性を残したともいえる。
とはいえ日銀が大量購入してきた国債は流通量に不安がある。何より金利が上がれば(国債価格は下落)、日銀に積み上がった国債は損失を抱え、結局は国民負担となる。現実的な物価目標に見直すなど早期に軌道修正すべきだ。
(東京新聞)
弥縫策とは、一時のがれの場当たり的な方策。
円安株高のための策だろう。
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