岸田文雄首相が意欲を見せていた金融所得課税の強化が、一転して先送りされることになった。
首相は自民党総裁選で格差是正を掲げ、金融所得が多い富裕層の税負担が軽くなる構造の打破を目指したが、政権発足早々につまずく格好となった。
給与所得への課税は最大55%で、収入が多いほど税率が高くなる累進性だが、株式の配当や譲渡などの金融所得は一律で20%となっている。この結果、所得税の負担率は所得5000万円超~1億円の層でピークとなり、金融所得が多いほど負担率が下がる「1億円の壁」の存在が指摘されている。
首相は「壁」を打破するため、金融所得課税の強化を「選択肢の一つ」と説明していた。首相の方針は投資家心理の悪化を招き、日経平均株価は6日まで8営業日連続で下落した。12年ぶりの事態で、この間の下げ幅は2700円超に達した。産業界からは「リスクマネーの供給を阻害し、明確に反対だ」(新経済連盟)と再考を求める声が噴出した。
市場の反応を感じてか、首相は8日の所信表明演説では金融所得課税に触れずじまい。10日のフジテレビの番組で「当面は触ることは考えていない」と語り、軌道修正を図った。
財務省はこれまで、金融所得課税の強化について「首相の意向次第」(幹部)との姿勢で、2022年度の税制改正で課税強化を議論する方向だったが、首相の方針を受けて棚上げする。政府内では先送りについて「市場を刺激したくなかったのだろう」(経済官庁幹部)との声が出ている。
首相は総裁選で、格差是正のため「成長と分配の好循環」を実現する考えを強調した。一方、分配の財源をどのように確保するかは依然として見えないままだ。
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格差是正のためにも富裕層の優遇ではなく、課税強化でしょう。目玉政策のとん挫で実行力の無さが浮き彫りとなりました。
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