「つまらない男」が宰相にまで上り詰めた―。岸田文雄新首相は4日夜、首相として初の記者会見で、「奇襲」とも言える19日公示、31日投開票の衆院選日程を打ち出した。「新型コロナウイルス対応に万全を期す」などと正面を見据えよどみなく語る姿には、昨年の自民党総裁選で敗れ「終わった政治家」と呼ばれた面影はない。ただ、宰相の座を射止められたのは、安倍晋三、麻生太郎両元首相らの後ろ盾があってこそ。言動の端々に長老らへの配慮もにじむ。 午後9時、首相官邸会見室。えんび服姿で壇上に立った岸田首相は冒頭の写真撮影では緊張した面持ちだったが、衆院選に話題が及ぶと鋭い目つきに変わった。「この岸田に任せていただけるのかどうか判断いただき、信頼と共感の政治を動かしていきたい」 国会日程などから、11月7日投開票の日程が既成事実化されつつあった永田町では、予想外の「一手」に衝撃が広がった。細田派中堅議員は「これまでの岸田さんらしくなくて驚いたが、強い意志の表れだ」と評価する。 「新しい資本主義を実現する。分配なくして成長はない」。岸田氏は会見で小泉政権以来続く新自由主義経済からの脱却を主張。新型コロナ対策では、菅義偉前首相が「説明不足」などと批判を浴びたことから「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行うことなどを基本としていく」と語り、対話姿勢をアピールした。会見の予定は30分間だったが、倍の1時間に及び、時間通りに会見を打ち切ることが多かった前政権との違いを演出した。
◇ ◇ 3世議員で、名門派閥「宏池会」の領袖(りょうしゅう)。「プリンス」と呼ばれ、早くから首相候補とされたが、現職の安倍氏への配慮などから総裁選には出馬してこなかった。「おとなしい」「つまらない」「控えめ」。周辺議員だけでなく、学生時代の知人らも口をそろえる。 岸田氏は初挑戦となった昨年9月の総裁選で菅氏に大敗してからの1年間、移動中も身ぶりを交えて演説に磨きをかけた。今回の総裁選では、5年以上幹事長を続けた二階俊博氏に退任を迫る党改革案を発表。演説では「今の時代に求められているリーダーは私」と言い切り、対抗馬となった河野太郎氏を支える「小石河連合」に対しては「4番バッターばかりそろえても駄目だ」と攻撃的な言葉を口にした。
科学技術立国の実現、経済安全保障担当相の新設…。岸田氏は記者会見でも「岸田カラー」の独自政策をずらりと並べた。だが、岸田派ベテラン議員は、岸田氏の「変化」には懐疑的な見方を示す。 岸田氏は、最重要ポストの幹事長と官房長官をそれぞれ麻生派、細田派に振り分けた。党副総裁を3年ぶりに復活させ、麻生氏を配置。目玉である経済安全保障も甘利明幹事長がリードしてきた政策だ。人事、政策両面で、総裁選を支えた長老たちへの配慮が浮かび上がる。 「これからは党の力が官邸より強い『党高政低』の状態になる。岸田首相は苦労するだろう」。ベテラン議員は気をもむ。 (井崎圭、前田倫之)
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どれだけ有言実行できるでしょうか。短命に終わるのでしょうか。
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