大阪国税局OBの男性税理士(72)が代表を務める税理士法人が、顧問先の課税を不正に免れるため、所得隠しを提案していたと大阪国税不服審判所の裁決で認定されたことが11日、関係者への取材で分かった。所得隠し額は約1億3千万円で、同国税局の税務調査で発覚した。OB税理士は取材に関与を否定したが、専門家は税理士法に抵触する可能性を指摘している。
関係者の話や関係資料などによると、税務調査の対象は、大阪府内の太陽光発電会社側が平成28年、神奈川県内で実施した太陽光発電パネル設置工事をめぐる会計処理。発電会社がグループ会社から発注を受ける形で工事が実施され、28年6月までにグループ会社から工事代金として約4億6千万円が支払われた。
うち約1億3千万円が神奈川県の補助対象で、28年8月に県から補助金を受け取った発電会社は、補助金と同額を発注元のグループ会社に送金。しかしグループ会社は、送金額は工事代金の値引き分だとして、28年12月期の収益に計上しなかった。
これに対し国税局は、2社間で値引きの事前合意は確認できず、補助金の収益計上を免れるために値引きを偽装した悪質な所得隠しと判断。グループ会社に31年4月、重加算税を含む約4千万円を追徴課税(更正処分)した。同社は処分を不服として国税不服審判所に審査請求したが、昨年6月の裁決で棄却された。
裁決では、値引きの事前合意を装った会計処理が、税務顧問だったOB税理士側の提案だったとも認定。事前合意があったと装うため発電会社本体の帳簿を作成し直した上で、当初の帳簿を国税局側に見せないことや、以前の書類やデータを破棄することもOB本人らが指示したと指摘した。
関係者によると、グループ会社を合併した発電会社は裁決後、OB税理士側に損害賠償を請求。今年4月ごろ、OB側が別の業務上の不備と合わせ、解決金2800万円を発電会社に支払うことで決着した。
OB税理士は取材に対し、所得隠しの提案を「していない」と否定。解決金の支払いは認めたが、理由は「消費税の手続きで失敗したため」と説明した。発電会社側の担当者は「お答えできない」とした。
税理士法人のホームページによると、OB税理士は大阪国税局で約30年にわたり法人調査などを担当。退職後の約20年前から税理士として活動している。
税理士法では、税理士が脱税や所得隠しを指南するなどした場合、業務停止など懲戒処分の対象になると規定する。大阪学院大の八ツ尾順一教授(租税法)は「税理士側の行為が事実ならば安直な上に悪質で、法に抵触する可能性もある」としている。(森西勇太)
プロの不正、後絶たず…
「税務のプロ」である国税局OBの税理士が、経験や専門知識を悪用し、顧問先の不正に加担する事例は後を絶たない。悪質な不正に関与したOBが逮捕されるケースも目立つ。
顧問先の企業に脱税を指南したなどとして、大阪国税局OBの税理士が平成25年3月、法人税法違反容疑で大阪地検に逮捕された。立件された脱税額は約2億7千万円にのぼり、情報漏洩(ろうえい)の見返りに国税局職員に現金を渡していた。
昨年12月には、新型コロナウイルス禍で収入が減った事業者らを支援する国の持続化給付金をだまし取ったとして、大阪国税局OBの元税理士が詐欺容疑で大阪府警に逮捕された。40件以上の不正受給の指南に関与し、給付金の一部を報酬として受け取ったとされる。
国税庁によると、28年度~令和2年度、税理士法の規定で税理士らが業務の停止や禁止といった懲戒処分を受けたのは計193件。5年間で最多の平成30年度には処分が51件にのぼった。処分の多くが、虚偽内容の税務書類を作成して脱税や所得隠しに関与したケースだった。
国税不服審判所
国税局や税務署から独立した国の機関で、東京・霞が関の本部のほか、全国に12支部と7支所がある。納税者の正当な権利利益の救済を目的に、課税処分などに対する審査請求について、3人以上の国税審判官などの議決に基づいて裁決を行う。
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稀に納税意識が低い国税局OB税理士もいますが、大部分はまともです。
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