【ウラジーミル・プーチンとは何者か】#82 プーチン大統領が最高司令官として君臨するロシア軍は、隣国に国家存続の危機をもたらした。 「いつでも核兵器を使用する用意がある」という脅しが、ウクライナの過度の越境攻撃だけでなく、国際社会にロシアとの全面戦争をちゅうちょさせた。最終兵器にむやみに頼るのは、通常兵器で北大西洋条約機構(NATO)に負けている裏返しでもある。 ■最終兵器を失ったウクライナ メドベージェフ前首相に至っては、ロシア占領下のクリミア半島への攻撃を「国家の存立」を脅かす事態と見なし、核戦争による「終末の日」まで警告した。ウクライナが失地回復への破壊工作を活発化させると、危険水位は高まった。 こうしてロシアが頼みの綱とする核兵器。実はソ連崩壊後、ロシアだけでなく、ウクライナも保有していた。不拡散のため、ベラルーシ、カザフスタンを含めた3カ国が核を手放す代わりに、他国から侵略されないと約束されたのが1994年のブダペスト覚書。米英と共に署名したロシアがこれを無視して2014年に軍事介入してきたものだから、ウクライナ人は怒り心頭だ。 そんなプーチン政権の「汚い戦争」。核による脅迫は、核兵器だけではない。ロシア軍は2月の侵攻開始直後に北部のチェルノブイリ原発を一時占領したのに加え、南東部にある欧州最大規模のザポロジエ原発も制圧した。 そのまま攻撃して大惨事を起こすことも辞さない「核テロ」と騒がれたが、別の狙いもあったらしい。ウクライナ国民に必要な「電源」を落としてしまうのがその一つ。 もう一つは、ロシア軍が原発を「盾」にする形で敷地内から攻撃し、ウクライナ軍に反撃を断念させる狙いだ。こうした手法は、親ロシア派武装勢力がドンバス地方で、集合住宅の中庭に重火器を配備して「人間の盾」を利用していたのと似ている。 ■「終末の日」を警告 8月にザポロジエ原発周辺で砲撃が激しさを増し、ロシア、ウクライナの双方が相手の仕業と非難する中、外部電源が一時失われた。世界は「核惨事の瀬戸際」(ウクライナのゼレンスキー大統領)に立たされたとも指摘された。 「柔よく剛を制す」とは、相手の力を利用して投げ飛ばす技術。プーチンは14年当時、親ロシア派のヤヌコビッチ元大統領が失脚した「マイダン革命」のピンチを、南部クリミア半島併合に転化した。他方で原発を戦争遂行に悪用するのは、不測の事態の代償が計り知れない。元柔道家としては、卑怯かつ危険極まりない。(つづく) (文=平岩貴比古/時事通信社元モスクワ特派員)
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痴呆症や老化現象で抑えが効かない老人そのものです。
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