“今”の成績が優れているわけではないか
日増しに注目度が高まっているア・リーグのMVPレース。大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)が2年連続受賞の可能性があり、ここ日本でも連日のように話題となっている。
もっとも、現在レースのトップと目されているのは、アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)だ。現地時間9月1日時点で51本塁打を放っている怪物スラッガーは、史上10人目となる複数シーズンでの50号越えを達成。1961年にロジャー・マリスが打ち立てたア・リーグ記録である年間61本を超える63本ペースで量産している。
選出の基準となる「bWAR」(米誌『Baseball Reference』のWAR)はジャッジが7.7。二刀流で異彩を放つ大谷のそれを0.4だけ上回っている。これだけ見ると僅差だ。ゆえに「どちらがMVPにふさわしいのか?」という議論は白熱する一方だ。
そうしたなかで、ジャッジを推挙する識者たちがしきりに唱えるのがチーム状況だ。
今季のヤンキースは、ア・リーグ東地区で開幕から首位の座をひた走り、日々ヒリヒリとしたプレーオフ争いを演じている。一方でエンジェルスは6月に球団史上最悪の14連敗を喫するなど不安定な時期が多く、西地区首位のヒューストン・アストロズとは27ゲームも差をつけられている。
米紙『New York Post』のジョエル・シャーマン記者も大谷の偉業を認めつつ、「ジャッジは大事な試合によるストレスや重圧に晒されることなしでプレーしている」と指摘。エンジェルスの現状が、大谷の足枷になっているというのだ。
しかし、“現状”を実際に見比べると、ヤンキースがずば抜けているとは言い切れない。というのも、7月22日(現地時間)から始まった後半戦におけるヤンキースの戦績は15勝24敗。さらに8月の月間成績は10勝18敗と大きく負け越している。かたやエンジェルスは、17勝21敗と負け越してはいるものの、単純な成績だけで見れば、ヤンキースよりも上なのだ。
もちろんヤンキースが前半戦に見せた快進撃は評価すべきではある。だが、ジャッジをMVPに断言するほど彼らの“今”の成績が優れているわけではないか。さらに言えば、ヤンキースよりも戦力の劣るエンジェルスで大谷は投手として11勝を挙げている。この貢献度と声価を評価すべきではないのか。
この点については、米放送局『ESPN』のコメンテーターを務める米ジャーナリストのトニー・コーンハイザー氏も「個人成績は優劣がつけがたい。それをチームの成績で判断するのは理解し難い」と意見する通りだ。個人成績をきちんと精査すべきだと思わずにはいられない。
ちなみに過去20年でプレーオフ進出できずにMVPを受賞した選手たちはバリー・ボンズ(01年、2004年)やジャンカルロ・スタントン(17年)など11人と意外に多い。それを見てもチーム成績でMVPを判断する意見への違和感はやはり小さくない。
【プレーオフ進出不進出のMVP受賞者たち】
バリー・ボンズ(2001、2004年/サンフランシスコ・ジャイアンツ)
アレックス・ロドリゲス(2003年/テキサス・レンジャーズ)
ライアン・ハワード(2006年/フィラデルフィア・フィリーズ)
アルバート・プーホルス(2008年/セントルイス・カーディナルス)
ブライス・ハーパー(2015年、2021年/ワシントン・ナショナルズ、フィリーズ)
マイク・トラウト(2017、2019年/ロサンゼルス・エンジェルス)
大谷翔平(2021年/エンジェルス)
構成●THE DIGEST編集部
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ヤンキースタジアムの狭さで、実質37本塁打程度でしょう。
誰も見たことがない歴史的な二刀流を誰が判断できるのでしょうか。
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