東大関・稀勢の里が今場所初黒星を喫したものの、トップの座を守った。西大関・琴奨菊との史上最多62度目の対戦に敗れたが、東横綱・白鵬が東小結・高安に押し出されて2連敗で2敗に後退した。
重い足取りが少しだけ軽くなった。初黒星の後、風呂から上がった稀勢の里を待っていたのは「白鵬連敗」の知らせだった。「立ち合い? どうですかね。悪くないと思いますよ」と語ったほか、意味のある言葉は残さなかった。とはいえ、優勝争いのトップを守れた幸運には感謝した違いない。
左は差せたが、負ければ大関陥落へ1敗もできなくなる琴奨菊の気迫に屈し、右足が土俵を割った。全勝ターンを決めながら翌日にあっさり負ける。過去5度のうち2回は敗れている“9日目のジンクス”にのみ込まれた。稀勢の里らしい結果に八角理事長(元横綱・北勝海)も「全勝で来ているのに勢いがなかった。大事なところでこける。サラッといってほしかった」と落胆を隠さない。弟弟子・高安の奮闘で首位を守れた事実だけが救いだった。
土俵下で観戦した横綱審議委員会の守屋秀繁委員長(75)は、より複雑な表情だった。「もったいないですね。1敗でも優勝は可能ですが、横綱に推薦となるとどうなるか…」。先場所は鶴竜と2差で優勝次点。今場所は明確な綱取り場所ではないが、全勝初Vなら昇進の可能性はあった。条件が崩れ「何とも言えない。全勝なら(推挙を)推しやすいね」と守屋委員長は言葉を濁した。
場所後を考えると痛恨の1敗だが、春場所(3月12日初日・エディオンアリーナ大阪)で横綱昇進に挑むには「優勝」の事実は説得力を増す。昇進を預かる二所ノ関審判部長(元大関・若嶋津)は「優勝争いは13勝まで落ちるのかな。14勝なら稀勢の里次第だよ」と下方修正した。「明日、明日だよ」と前を向いた和製大関。一気の綱取りは風前のともしびでも、賜杯は手放せない。(網野 大一郎)
(スポーツ報知)
琴奨菊に勝たないのは、稀勢の里の優しさだろうか。
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