連休前の楽天戦5回戦、ファイターズはサヨナラ勝ちで勝率を5割に戻した。思っていたよりずっと早い。故障者が続出して、今年は大変だぞと覚悟していたのだ。離脱していた選手が戦列復帰しはじめた。ここからコツコツ貯金をつくっていきたい。
が、5割復帰はなかなか大変だった。大谷翔平の3号スリーランでリードするも、小刻みに失点し、またこちらはチャンスでタイムリーが出ない。ようやくラッキーセブンに攻撃で6対3に突き放したと思ったら、9回、同点に追いつかれてしまった。
観戦していて、頭くらくらしはじめる。あるいはぼーっとして意識を失いそうになる。これを僕は野球バカの友人たちと「麻酔タイム」と呼んでいる。この日も9回、クローザーの増井浩俊が出てきた瞬間、「うわ、やっぱり麻酔タイムです!」的なLINEメッセージがじゃんじゃん届いた。
札幌ドームでは今季、増井の登板に合わせて「MASUI TIME」とかっこよくモニターに表示されるのだ。GAORA実況の近藤祐司さんも「増井タイム」を盛り上げる。昨シーズン、56試合に登板して1敗39セーブ4ホールド、防御率1.50のピッチャーだ。抑えの切り札だ。しかも、スラッとした好男子だ。そりゃ盛り上げなくてどうする、なんだけど。皆、何か「増井タイム」に嫌な予感がしたのだった。これはネタになっていくんじゃないか……。
ファイターズ野球=守りの野球
過去、ファイターズのクローザーでは、圧倒的に「武田寿司」のネタが人気を集めた。長く抑えを担当した武田久を寿司屋の大将に見立てて、登板するとSNSで「よう大将、今日はいいネタ入ってるかい?」と言いだす。出てくると必ずランナーを出す等、「ひとネタ」くれる、というシャレのようなものだ。すんなりは終わらない(すんなり終わるときは「大将、今日はもう看板かい?」と言ったりする)。
これは登板過多になりがちなクローザーの宿命かと思うのだ。いつも調子がいいとは限らない。カミソリと同じでだんだん切れ味が落ちてくる。それでも「顔」で抑えてしまう。ピシャリと三者凡退とはいかなくても、経験や度胸で何とかしてしまう。「武田寿司」は相手チームのファンに新鮮な「ひとネタ」は提供したかもしれないが、大概の場合は「もう看板」のゲームセットだった。
で、増井も昨シーズン、抜群の成績を上げてはいるが、案外ランナーを出していた。結果的には抑えても、僕らはわりとハラハラしていたのだ。敵チームのファンから「増井寿司」の声もかかった。ネタ化する気配は濃厚に立ち込めていたのだ。
それが今季は「増井タイム」だ。オフィシャルに名前がついた。かなり不安定だ。出来不出来の差が激しい。技術的にはフォークのコントロールがバラつく。グラウンドに叩きつけるような軌道になったり、あるいは浮いて打ち頃の半速球になったり。4月24日のソフトバンク5回戦、内川聖一にサヨナラ弾を食らったのも浮いたフォークだった。
つまり、5割復帰はめでたいが、まだ波乱含みなのだ。ファイターズは北海道移転以来、ずっと「先行逃げ切り」だ。中継ぎ、抑えの頑張りで僅少差のリードを保つゲームプランだ。それはおそらく「ビッグバン打線の東京ドーム」から広い札幌ドームに本拠地が変わったとき、必然的に選び取られた戦略だろう。ディフェンスの野球。そのために俊足の外野手を歴代揃えてきた。
増井の復調が待たれる。「麻酔タイム」が続くかぎり、まだ重要なピースが埋まらない。ファンはぼーっと気を失いかけたりしながら9回を耐えるのだ。
えのきどいちろう
ベースボールチャンネル編集部
復調できるだろうか。新たな守護神が必要だろう。
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