<1>広角打法
目を見張るのが逆方向への本塁打の量産だ。今季の9本塁打中、7本が左方向への打球。西武・炭谷は「内角の球を今まで以上に逆方向へうまく打つようになった。内角も特に嫌がらないし。かといって外に投げてもリーチが長いので」と変化を感じ取っていた。
4月27日の楽天戦(札幌D)で左翼席へ3号3ランを打たれた美馬も「打ち取ったと思ったり、いってもフェンス直撃かと思ってたら、入ったりした。穴は少ないし、バットスイングが速いからなかなか空振りが取れない」と打力を認めた。
大谷自身も常々、「逆方向は勝手に飛ぶ。いい打球は左中間の方が多い。厳しく内角に来たら払えばいいので」と自信を持っている。
<2>ポイント
交流戦開幕戦となった5月31日のヤクルト戦(札幌D)で、大谷の左翼への本塁打を目の当たりにしたヤクルト・中村は、打撃へのアプローチに他の選手との違いを見いだしていた。「(ポイントが)だいぶ近い。振り出しも(他の打者と比べて)かなり遅い。それでも軸がブレないからレフトにもボールが飛ぶ。打球が(他の打者と)違う。飛距離、パワーが本当にすごいから、あれだけ(逆方向にも)飛ぶ」と目を丸くした。
今年はオフに行ったレンジャーズ・ダルビッシュとの合同筋力トレによって、一時期体重が100キロの大台に到達するなど肉体的にも成長。体の軸がしっかりしたことで、上体が突っ込まず、体の近くまでボールを呼び込んで打てる。その結果、相手バッテリーが差し込んだと思った打球でも、失速することなくフェンスオーバーしてしまう。
<3>軸足
大谷と同じ94年生まれで、光星学院の時から花巻東・大谷と対戦経験のあったロッテの田村は、バッターボックス内での、昨年とは違うある変化を口にした。「今年は軸足の左足に体重が残るようになった。体重が残ることで、結果的にボールのミートポイントが近くなって、呼び込んで打てる。それが量産につながっているし、空振りもしなくなった」と明確に指摘した。
<4>スピード
大谷が新人だった13年はチームメート。14年にFA移籍後はライバルとして戦うソフトバンク・鶴岡は「とにかく今年はスイングスピードが速くなっている。速くなると、いいことずくめですから。どんなボールにも強くなりますし、当然、内角をさばけるようになりますよね」。ポイントが近くても長打が生まれるのは、全ては驚異のスイングスピードが基になっているのだ。
なぜ、スイングスピードが速くなったのか? 昨季の序盤は投手で右ふくらはぎをつるアクシデントに2度も見舞われ、打席数が減少した。しかし、今季は60試合消化時点で昨季より51打席も多い121打席に立つなど、実戦感覚がしっかりと養われていることが大きい。大谷も「去年は、自分が打席の中で待ち方ができていなかった。今年はいい感じで球を迎えられている」と違いを強調した。
日本ハム・石本チーフスコアラーの証言も興味深い。打者・大谷について「『相手はこういう攻め方をしてくるから、こう打ちます』と言って打席に入っていく。配球をしっかりと読んでいる」と明かした。頭の中で狙い球を絞って打席に立つことで、迷いなく強振できることもスイングスピードの向上につながっている。
さらに前述したダルビッシュとの合同自主トレの成果もある。ダルは自らと比較し、大谷が瞬発系の筋肉の割合が大きいことに驚いていた。筋トレの結果、さらに速く、力強い振りが可能になった。城石打撃コーチも「スイングスピードは球界で一番速いと思う」と侍で4番を担う中田よりも上であると断言した。
<5>対応能力
今年は失投を逃さない積極打法も目を引く。9本塁打中、5本塁打が0ストライクから。さらに残り4本中、3本を3球目以内で決めている。今季カード別で最多の4本塁打を献上しているオリックス・伊藤は「甘く入ったりすると、一発で仕留めている。そこが今までと違う。去年より対応力がアップした」と明かした。
今季のオリックス戦の4発は、いずれも捕手が内角に構えながら、投手が攻めきれずに甘く入ったボールを大谷が仕留めたもの。今季2被弾した東明も「投げる側のミスを見逃さず、確実に一発で仕留めている」と振り返る。ミスショットが減ったことも好調の要因だ。
ただ、今後は相手チームのマークが厳しくなるだろう。“大谷封じ”のモデルケースとされる一戦がある。7日の広島戦(旭川)だ。大谷と初対戦となった左腕・戸田は捕手・会沢とコンビを組み、追い込むまでは徹底的に直球で内角を攻め、最後は外へ逃げるスライダーを決め球に3打数無安打2奪三振に封じ込めた。
戸田は「どれだけいいバッターでも弱点はある。そこに確実に投げられるか。大谷だけじゃないけど、いいバッターには怖がらずに内を使わないといけない」と意図を説明した。
ソフトバンク・鶴岡は自チームの強打者を引き合いに、さらに警戒レベルを上げる意向だ。「ウチの柳田がやられているみたいに、どんどん厳しいところを攻めていかないと」。昨季トリプルスリーを記録した柳田は今季序盤から厳しいマークにあい、4月終了時は2割3分6厘と苦しんだ。今後は大谷にも“柳田級”の徹底マークが待ち受ける。
楽天・古久保バッテリーコーチは言う。「ウチだけでなく、なかなか内角を攻めきれていない。(投手なので)遠慮が入るのかな。打者としてくるわけだから、攻めないと」。8日の広島戦(札幌D)で大谷は左腕・ジョンソンから3年ぶりに死球を受けたが、同じように厳しくインコースを突いていく姿勢を今後はバッテリーへ求めていくつもりだ。
投げてもMAX163キロと成長は止まらないが、もはや「打者・大谷」の才能に疑問を抱く人はいない。今後、厳しいマークに、どういうアプローチをしていくのか―。そのハードルを乗り越えたとき、二刀流男は球界を代表するバッターへと君臨しているはずだ。
(スポーツ報知)
消化ゲームになりつつあるけど、楽しみは大谷だけ。
厳しく攻められて、天才打者・大谷がさらに開花するのだろう。
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