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開会式まであと1か月に迫る東京五輪だが、中止を求める世論は日増しに高まるばかりだ。そうした状況の中、本来であれば五輪の宣伝効果を存分に活用できたはずの名だたるスポンサー企業は息をひそめたままである。
本誌・週刊ポスト(6月4日号)が実施した国内公式スポンサー全71社に対するアンケート調査では、7月開催に「賛成」と明言した企業は6社のみで、30社超が「無回答」を貫いた。
そんななか、組織委とスポンサー企業の本音が飛び交う会議の内容を、ジャーナリズム組織「Tansa」(5月28日付)が報じた。 「Tansa」が入手したのは4月28日にオンラインで開催された「パートナーミーティング」の議事録だ。会議はスポンサー各社から担当者が参加している。組織委側の参加者は副事務総長とマーケティング局長。ともに幹部クラスだ。 その日、組織委は「観客制限は50%を目指す」との方針を示しているにもかかわらず、「無観客」の可能性や、大会開催中の中止もあり得ることにまで言及したため、会議は紛糾していた。 「Tansa」が入手した議事録にはスポンサー企業の参加者の戸惑いの声が収められていた。 「なぜ今、無観客と言い始めるのか。驚愕している。釈然としない」 「昨年3月の時点で専門家はコロナの収束には2、3年はかかるといっていたのに、なぜ今頃最悪のシナリオが出てくるのか」 「このタイミングで無観客と正式に可能性として認めた意味がわからない。これまでと違う意味合いを組織委員会が示唆しているような気がする」 そう懐疑的な意見を述べる企業に対し、組織委はこう答えている。 「公式リリースには『無観客』とは書いていない。お客さんを入れる方向で最大限努力することで変わりはない。基本的には客を入れて開催することが組織委員会の第一選択だが、感染状況によっては無観客もありえる、というのが橋本(聖子)会長の説明だ」 五輪開催中にパブリックビューイングなどを行なう「ライブサイト」の予定地であった代々木公園について、小池百合子都知事は6月1日、急きょワクチン接種会場に転用することを発表した。このライブサイトについても4月の会議の時点でスポンサー企業からは不安の声が上がっていた。 「大会期間中のライブサイトやショーケーシングは、無観客の場合どのような影響が出るのか」 その問いにも、組織委はこう答えるのだ。 「正直決まってないことが多いのでこの場では回答できない。(中略)ライブサイト等への影響も想定できていない。無観客の可能性はゼロではないが、今は想定していない」
ある企業からは、「五輪中止はもうないのか」という質問まで飛び出したが、組織委の答えは「最後の最後まで分からない。大会の最中であっても中止はあり得る」という驚くべきものだった。 前述した本誌・週刊ポストのスポンサー71社へのアンケートで目立つのは、慎重な言葉選びで賛否以外の見解に終始する企業だった。なかには他社がどう回答するかを“問い合わせ”してくる企業もあった。 世論が気になり、「賛成」「反対」を明確にできない苦しい立場は、議事録からもにじみ出ている。企業がこんな本音を吐露する場面があった。 「一般客のチケットが削減される一方で、パートナーのチケットが有効だったら、一般客に行き渡らなくなるケースが出てくる。メディアでそのことが報道される可能性があり、世論から批判されるのが心配だ」 「組織委員会とパートナー企業で越えなければならない共通の壁は、世論だ。中止すべきだという世論を逆転させる必要がある」 世論に「耳を傾ける」ではなく、「引っくり返すべき」という発想自体、“五輪ムラ”が国民とかけ離れた場所になっていることを物語る。 「Tansa」の渡辺周編集長はこう語る。 「スポンサー企業の懸念は東京五輪で儲けるチャンスを失うことだけでなく、五輪反対の世論が増す中で、反対しないことで企業のブランドイメージが失墜することです。スポンサー企業の担当者を取材しても、そのことを非常に気にしていた。 五輪を強行したい菅政権やIOC、そして“お上”につき従うしかないスポンサー企業の姿は、戦争に突入していった日本と重なります」 組織委に議事録の内容について問い合わせたが、「パートナーとは日頃からコミュニケーションをとっており、ミーティングも実施しております。実施日程や議題は公開する予定はありません」(戦略広報課)との回答だった。 菅首相が唱える「団結の象徴」としての五輪など夢物語である。 ※週刊ポスト2021年6月18・25日号
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何のためにやるのか。
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