開幕まで50日を切った東京五輪・パラリンピック。政府は、国内のスポーツイベントに準じる形を取ることで、あくまで有観客開催とするシナリオを描く。来週後半にも開く新型コロナウイルスの基本的対処方針分科会に、7月以降の国内イベントの観客上限数などを諮り、専門家の了承を得てそのまま東京大会にも適用したい考えだ。ただ、人の動きが活発化することによる感染再拡大のリスク対策は示されておらず、懸念の声も強い。
「5千人はいける。もっと入れることも検討中」
「プロ野球だって全国から人が集まる。五輪と一体、何が違うのか」。6月に入り、官邸関係者の間には国内のスポーツイベントと五輪を同列視する発言が急に目立つようになった。つまり、東京大会だけを縛るような特別な観客規制は必要ないことを意味する。 現在、プロ野球やJリーグなどの観客数は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域で「上限5千人か、収容定員の50%以内の少ない方」などとなっている。これらの規制は、宣言発出地域などでは6月20日などその期限まで、それ以外の地域は6月末までで切れる。 そこで、最近の全国的な新規感染者数の減少やワクチン接種の加速、宣言解除の方向性といった有利な材料を前提に、世論と専門家の理解を得ながら、東京大会期間中を含む7月以降の有観客規制を決めようというのが政府の戦略だ。ウイルス「第4波」が猛威を振るっていた時期には「五輪の無観客開催」に相当傾いた政府だが、現状は「5千人はいける。もっと入れることも検討中」(官邸筋)とのムードとされる。
「雰囲気なんて勝手にできあがるもんなんですよ」
ただ、専門家の間には、社会的注目度が極めて高い五輪・パラリンピックは、国内イベントとは全く異なる規模で人の流れの増加を生み、全国的な感染リバウンド(再拡大)につながりかねないとの危機感がある。
分科会の尾身茂会長は「さらに感染の機会が増加するということなので、本当にやるのであればかなり注意してやる必要がある」と政府に慎重判断を要請。五輪期間中は国民が移動する夏休みの真っ最中であり、西浦博京都大教授(感染症疫学)の推計によると、五輪の要素をなくしたケースでも8月前半には、東京都の感染状況が緊急事態宣言が必要な数値まで悪化してしまう結果も出たという。 東京大会について、首相は党首討論などで「国民の命と健康を守ることが開催の大前提」と繰り返し、政府高官は「観客上限も決まっていないのに、どのような根拠やデータを基に『危ない』と言えるのか。感情論にすぎない」と専門家をたしなめる。最終決断の時が近づく中、「(五輪の)雰囲気なんて勝手にできあがるもんなんですよ」(官邸筋)との声もある。
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これまで後手後手の対応で感染拡大を招いた政府が、過去の反省もなく、有観客での強行開催はあまりに愚かだろう。
(久知邦)
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