北海道の知床半島の沖合で遭難した観光船…2016年から5年間、船長だった51歳の男性が運航会社の“実態”を証言しました。
男性は2016年から5年間、遭難した「KAZUⅠ(カズワン)」19トンの船長で、自分が船長の間は無事故だったが、経営者が変わったあとの去年3月、契約を打ち切られたといいます。
◆今回の遭難を聞いて…
「『やっぱりか』です。『やっぱり、やったか』と。長い間、勤めていたけど、去年3月で契約を解除された。人が総入れ替えになって、今は教える人間がいない」
◆おととし7月に船舶免許を持つ3人が見習いで入り、そのうちの1人が今回、遭難した船長の豊田さん…
「去年6月に事故を起こしていて、船をあげて修理している状態を見たけど、見たら、船にある亜鉛版をおととしのまま変えていなかった。これは毎年変えるもの」
※亜鉛板は、船体の腐食を防ぐために貼り付けるもので、船体の代わりに亜鉛板が腐食してくれる役割
「僕がいたときは、事務所に長く勤めていた人がいたから、手直しもできていたし、手に負えなければ、業者がやっていたけど、今見ている感じだと何もしていない」
「豊田さんは、僕がいた最後の年の夏に雇用された。半年、甲板員をやって、すぐ船長をやった。教えられるほど、教えていないと思う」
「もう一隻の観光船『KAZUⅢ』の船長は(豊田さんは)そこそこ運転できるんじゃないかとは言っていた」
「けど、結果的に何も教えることなく、僕は去ってしまったけどね」
◆漁船が引き返す中の出航だったが…
「(その日の出航を決めるのは)船長の権限、いい波か、悪い波か、判断できないうちは、船長をやるべきじゃない」
「あのときは『KAZUⅠ』だけ出航していた、他の船も出ていれば助けてあげられたけど」
「天候次第で、皆で(今日は出航を)やめようとか決めるけど、それぞれのコースによって出すこともある、客の奪い合いとかはない」
◆今の経営者は…
「今の運航会社の社長は、船のことも、海のことも知らない」
「お金にだらしない人。銀行で金を借りていたけど、去年、おととしくらいから経営が上手くいかずに、常に『お金がない』と話していた」
「波があって出航をやめたときも、社長には『何で出さないんだ』と言われていた」
「経営は厳しく『銀行からお金が借りられない』と言っていた」
「僕がいる間は、無事故の会社だった」
「室内船は、乗船時はライフジャケットの着用義務はない」
「知床岬コースは、長いし、人気のコース。社長が変わってから、4月からやるようになった」
「当初は、4~5月は海が冷たくて、時化るため、6月まで運航していなかったコース」
「クマがほぼ見られることや、時間が長いコースであることから、人気のため、他の会社もやってるし、GW中にも出すように変えた」
今回の遭難では、26人が行方不明になっていて、24日に乗っていたとみられる10人の死亡が確認され、25日午前、新たに子ども1人の死亡も確認されました。
地元の斜里町は、両親も一緒に遭難した3歳の女の子と発表しています。
海上保安庁は、捜索を続ける一方、業務上過失往来危険などの疑いを視野に調べをすすめる方針です。
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乗客の安全よりもお金優先の人災は恐ろしい。