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2016年6月11日土曜日

ホンダ・中上貴晶が今季初の表彰台。MotoGPシート獲得への条件とは?

 ロードレース世界選手権・Moto2クラスに出場する中上貴晶が、第7戦カタルーニャGPで3位になり、今季初表彰台に立った。昨年のサンマリノGP以来、12戦ぶりのことだった。

 今年は開幕前のウインターテストから好調で、今シーズンの目標は、「Moto2クラス卒業」というものだった。卒業というのは、最高峰クラスのMotoGPクラスに参戦するということを意味する。そのためには、最低でもチャンピオン争いをしなければならない。そして、中上のグランプリ参戦をバックアップしているホンダの「ゴーサイン」が必要となる。

 今年は7戦を終えて総合7位。チャンピオン争いに加わるには、これから表彰台に立ち続けなければならないし、念願の初優勝を達成し、いくつもの勝利を重ねなければならない。と考えれば、来季のMotoGP参戦の可能性はゼロではないが、相当ハードルの高い戦いが待ち受けることになる。

 所属するチームは「IDEMITSU HONDA TEAM ASIA」。

 ホンダがアジアのライダーを世界に送り出すために作ったチームで、現在、Moto2クラスに2人。Moto3クラスには、「Honda Team Asia」というチーム名で2名の選手が参加している。中上は、ホンダのTeam Asia構想の中心的存在で、日本のエースでもある。

地位を脅かすライバルは原動力となるが……。

 Moto2クラスは、ホンダCBR600RRのエンジンをチューニングした同一エンジンを搭載するカテゴリー。予選では、PPから1秒以内に20人前後がひしめきあう厳しいクラスである。

 Moto2クラスでチャンピオン争いが出来れば、MotoGPクラスでも十分に通用する。その厳しい戦いの中で中上は、スピードという点では、トップクラスにいる。

 スピードだけなら十分にチャンピオンを狙える中上だが、天候やコンディションの変化に影響を受けやすく、いつでもどこでも速いという選手ではない。それがこの数年の課題でもあった。

 そして、中上にもっとも必要なことは、「何が何でも勝つ」という強い気持ちだろうと思う。

日本人ライダーのライバルがいない、という不運。

 その強い気持ちを引き出す要素のひとつに同じ国出身のライバルの存在がある。

 1990年代から2000年代に掛けての日本人全盛時代を支えた理由のひとつに、「あいつには負けたくない」という同国人ライバルの存在があったのは間違いない。

 それは日本人選手に限らず、スペインやイタリアなど、同じ国の選手たちがひとつの時代を築きあげていく時に、共通して見られる現象でもある。

 Moto2クラスに参戦する日本人は中上ひとり。

 「あいつだけには負けたくない」という動機付けが期待できないだけに、個人としての強い気持ちがより一層必要になる。

 これは、簡単なようでいて、実に難しい課題でもあるのだ。

下からの突き上げも「卒業」を急ぐ要因に。

 中上は、今年24歳。

 ホンダのライダー育成構想の中で、彼を脅かす存在はいない。

 しかし、アジアタレントカップやFIM・CEVレプソル国際選手権でホンダがサポートしている若い選手が着実に成長しているだけに、中上の言葉通り、「Moto2クラス卒業」の時期は、いろんな意味で刻々と迫っていることになる。

 それ以上に、ホンダの日本人選手MotoGPクラス参戦の歴史は、2009年の250ccチャンピオンで'10年から('14年まで)MotoGPクラスに参戦した青山博一を最後に空白時代が続いていることが気にかかる。

 '11年のステファン・ブラドル、'12年のマルク・マルケス、'13年のポル・エスパルガロ、'14年のティト・ラバトと、Moto2クラスでタイトルを獲得した選手と中上は10代のころに一緒に戦っている。

 中上のMotoGP挑戦というプランは、我々が思う以上に現実味あるものだ。

 そういった大きなチャンスの中にいる、ということを、中上自身がいま以上に強く自覚しなければならない。

MotoGP参戦の条件はただひとつ、勝利だけ。
 MotoGPクラスのシート獲得は、年々、厳しさを増している。

 チャンピオン争いを繰り広げたからといって、シートを獲得できるとは限らない。しかし、日本人選手がMotoGPクラスに参戦するためには、Moto2クラスでチャンピオンを獲得するか、最低でもチャンピオン争いに加われなければならない。そこまでしないとホンダのバックアップは難しく、シート獲得の道が開けないのも事実なのである。

 第7戦カタルーニャGPで今季初表彰台に立った中上は、「これから表彰台に立ち続けていけるようにしたい」と語った。

 その言葉の実現には、これまで以上の頑張りが必要である。

 願わくば、表彰台に立ち続けることで、中上の心の何かが変わることを期待したい。そして、最高の形でMoto2クラスを卒業してもらいたい。
(「モーターサイクル・レース・ダイアリーズ」遠藤智 = 文)
 日本人ではダントツも、世界との差は大きい。

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