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保育施設などで新型コロナウイルスの感染者が出た際、保健所による濃厚接触者の特定を取りやめる方針を示す自治体が相次いでいる。特定と自宅待機による感染拡大防止より、濃厚接触者になった職員や自宅で子どもの世話をする保護者が出勤できなくなる弊害が大きいと判断したことが主な理由だ。歓迎の声がある一方、保育施設の関係者や保護者の間には感染拡大に歯止めがかからなくなると不安視する声も聞かれる。【秋丸生帆、山中宏之、澤俊太郎】 「濃厚接触者がいても野放しになる。感染が広がらないか心配だ」。2歳の長女を保育所に預ける東京都板橋区の女性会社員(32)は表情を曇らせる。7月に入り、保育所からは数日おきに陽性者発生の連絡が入るようになった。女性は「いつ娘が濃厚接触者や感染者になってもおかしくない状況だが、保健所や保育所から濃厚接触者だと言われなければ検査すべきかどうかもわからない。全て自己責任ということか」と不安がる。 都は22日、保育所や幼稚園、小学校での濃厚接触者の特定を取りやめる方針を発表。小池百合子都知事は記者会見で「社会経済活動との両立を図る」ためだと説明した。 都内のある区の保育担当課の担当者は「陽性者の行動履歴の調査など現場業務がかなり軽減される」と期待する。これまで保育所などで園児から陽性者が出た場合、保育士らが園児や保護者から、接触した可能性のある園児や職員、その時のマスクの着用の有無などを聞き取って保健所に報告。濃厚接触者に該当するか判断を仰いできた。 「子どもの年齢によって活動範囲は大きく異なる。濃厚接触者の判定には相当な時間を費やしてきた」と担当者はメリットを強調する。だが、特定をやめることでクラスター(感染者集団)発生につながるのではという不安もあるという。担当者は「施設内で感染者がある程度の人数出た場合は調査をお願いせざるを得ないだろう。今後、基準を検討して区内の保育所などに通知したい」と話す。 保育の現場はどう捉えているのか。約130人の園児が通う私立光塩女子学院幼稚園(杉並区)の早川紀子主任は「保健所からのお墨付きがなくなるだけで実態としてはこれまで通りの対応が必要になるのではないか」と指摘する。 5月に園児3人が同時に感染した際には、保健所に報告してアドバイスをもらい、学級閉鎖に踏み切った。都の方針発表後も杉並区は義務ではないとしながらも陽性者発生の報告を各施設に求めている。早川主任は「今は保護者の多くが感染拡大を不安視しており濃厚接触者の自宅待機にも協力的だ」と言い、従来通り陽性者の行動履歴の調査は必要だとの考えだ。 都に先行して千葉県は20日から特定をやめている。厚生労働省の担当者は「保育施設などでの濃厚接触者の特定は3月に各自治体に判断を委ねる通知を出している。各自治体は現在オミクロン株の特性を踏まえた対応をとっているのだろう」と話す。 大阪府では2月以降、保健所による特定作業はせず、各施設の判断に委ねている。吉村洋文知事は「(保健所による)濃厚接触者の調査は高齢者施設や医療機関に集中している」と説明する。愛媛県も4月から学校や保育施設など各施設に任せており、中村時広知事は「できるだけ踏みとどまって、やれることはやっていく」と話す。 厚労省に新型コロナウイルス対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード」にも実務者として出席する東京都北区保健所の前田秀雄所長は「感染対策と経済を両立させるという判断が特定取りやめの根底にある。流行の中心となっているオミクロン株の派生型『BA・5』の感染リスクがこれまでの変異株に比べて減っているわけではない。決まってしまった以上はやむを得ないという思いだ」と言う。 前田所長は、基礎疾患のリスクがある陽性者の入院が難しくなっているといい、「濃厚接触者の特定取りやめで病床がより逼迫(ひっぱく)する可能性もある。感染するリスクは十分にあると思って日々の感染予防を徹底してほしい」と訴える。
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場当たり的に、なし崩しはどうなんでしょうか。施設のクラスター多発でしょうか。
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