米海軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)の周辺住民約7000人が、米軍機と自衛隊機の夜間・早朝の飛行差し止めと、騒音被害に対する損害賠償を国に求めた「第4次厚木基地騒音訴訟」の控訴審判決で、東京高裁は30日、1審・横浜地裁判決に続き自衛隊機の飛行差し止めを命じ、国側の控訴を棄却した。斎藤隆裁判長は「睡眠妨害は相当深刻で、健康被害に直接結び付き得る」と指摘した。差し止めを命じた判断は高裁レベルでは初めて。各地の基地騒音訴訟に影響する可能性が強まった。
また、騒音被害に対する賠償について判決は、米空母艦載機が2017年までに厚木基地から岩国基地(山口県岩国市)に移転される在日米軍再編計画があることを踏まえ、「騒音被害の違法性が少なくとも40年は続いており、今後も継続が見込まれる。艦載機移転予定の16年末までに限って将来分の請求は認められる」と指摘。16年末までの賠償金12億円を新たに認めた。過去の被害に対する82億円を加え、賠償額は過去最高の約94億円とした。騒音訴訟で判決後にわたって将来分の損害賠償が認められるのは初めて。
住民側は4次訴訟で、賠償を求める民事訴訟と同時に、行政処分や公権力行使の適法性を争う行政訴訟を起こした。1審は「自衛隊機運航は住民に騒音などの我慢を義務付けるもので、防衛相による公権力の行使に当たる」と判断。基地騒音訴訟で初めて自衛隊機の飛行差し止めを命じた。
高裁は、自衛隊機の差し止めが行政訴訟の対象となるかを改めて検討し、「睡眠妨害は賠償金による補填(ほてん)では回復できない」として対象になると判断。その上で「夜間・早朝の自衛隊機の運航は、防衛相に与えられた権限の範囲を逸脱し違法」と国の対応を批判し、1審と同様に午後10時から午前6時までは、やむを得ない場合を除いて、自衛隊機の飛行差し止めを認めた。ただ、岩国基地への米空母艦載機移転が予定されていることから「艦載機が騒音の大きな比重を占めており、17年1月以降は騒音状況が大きく変わる可能性がある」と時期を16年末までに区切った。
一方、米軍機の差し止め請求は「防衛相に米軍機の運航を統括する権限はない」として1審に続いて退けた。米軍機は自衛隊機よりも騒音が大きく、離着陸回数も多いため、判決が確定しても基地周辺の騒音被害は継続することになる。
原告は航空機の1日の騒音を表す基準「うるささ指数」(W値)が75以上の地域の住民。環境省の環境基準は、住宅地を中心とする地域はW値70以下と定めており、W値75は午後10時〜午前7時に75デシベル(地下鉄の車内程度)の騒音を50回聞いた計算になる。
判決を受け中谷元防衛相は「関係機関と十分調整の上、(最高裁に)上訴することを検討していく」と記者団に語った。ただ、海自は緊急時を除いて深夜・早朝の飛行を自主規制しており、判決は部隊の運用に直ちに大きな影響は与えないとの見方もある。【島田信幸】
◇控訴審判決・骨子◇
・防衛相は2016年末までの間、やむを得ない場合を除き、午後10時から翌日午前6時までの間、厚木基地で自衛隊機を飛行させてはならない。
・米軍機の飛行差し止めの訴えは退ける。
・16年末までの将来分も含め、原告約7000人に対し、国に約94億円の賠償を命じる。
◇厚木基地騒音訴訟◇
厚木基地周辺の住民92人が1976年、米軍機・自衛隊機の飛行差し止めと損害賠償を求め、民事訴訟で1次訴訟を起こした。最高裁は93年、差し止め請求を退ける一方、賠償は認めた。賠償額は、1次訴訟は69人に約1億600万円、2次訴訟(99年確定)は134人に約1億7000万円、3次訴訟(2006年確定)は約4900人に約40億4000万円。4次訴訟は周辺8市の約7000人が07年12月、民事訴訟と行政訴訟で提訴。横浜地裁は14年5月、行政訴訟で自衛隊機の飛行差し止めを初めて認め、民事訴訟で約70億円の賠償を命じた。
(毎日新聞)
高裁レベルでの、自衛隊機の飛行差し止めは初めてで、防衛省は驚きだろう。
司法が、判断できるレベルなんだろうか。要は、日本の平和を守ることと、周辺住民の騒音のどちらを保護するか。
0 件のコメント:
コメントを投稿