◇共働きでも「7割の父親が育児をしない」
週末、父親たちがベビーカーを押したり、公園で子どもと遊んだりする姿をよく見かけます。数々のアンケートでも、「仕事よりも家族を優先したい」「父親も育児に関わるべきだ」と答える父親が多くなっています。
しかし不思議なことに、父親たちの育児・家事参加の時間は、1990年代から現在まであまり増えていません。政府の調査では、6歳未満の子どもを持つ親が育児・家事に費やす時間は、母親が1日約6時間(共働き)~約9時間(専業主婦)ですが、父親はわずか1時間程度です。北欧やアメリカの父親は1日3時間かそれ以上、育児・家事をしています。
これは平均値ですが、共働き世帯の場合でも、7~8割の父親が日常的に育児や家事をほとんどしていないという実態が報告されています。育児や家事をしているのは、6歳未満の子どもを持つ父親の約3割です(総務省「2011年社会生活基本調査」)。
日本の父親が育児・家事をしない主な理由は、長時間労働にあるといわれています。では、父親たちは時間さえあれば育児や家事を積極的にするのでしょうか。
中京大学の松田茂樹教授が、育児を「遊び」「世話」に分けて分析したところ、興味深い結果が得られました。育児をする父親たちは、子どもとの「遊び」はよくするけれども、子どもの食事の用意や洗濯などの「世話」はあまりしない、という傾向があることがわかったのです。
1歳の息子を持つ会社員の男性(30代)は、積極的に子どもの行事に参加する「イクメン」で、周囲でも評判です。ところが、家庭の育児でどんな苦労がありますかと聞かれ、彼はこう答えたのです。
「僕はオムツを替えたりしないんですよ。そういうのは妻の担当なので、妻の自由にまかせています」
にこやかに答えたその隣で、妻は少し困ったような表情を浮かべていました。
2歳の娘を持つ会社員の男性(40代)は、平日は保育園の送りを担当し、週末に娘と「遊ぶ」という日々を過ごしています。妻は中小企業でフルタイムの営業職をしていますが、申し訳ないと思いつつ、会社と交渉してほぼ定時に帰っています。平日の保育園へのお迎え、夕食の準備や洗濯、娘の世話はすべて妻1人がこなしています。
妻は、通勤時間も長く、毎日あまりに疲れるので、たまには早く帰って家事や娘の「世話」を手伝ってくれないかと、夫に頼みました。
すると夫は「自分は家事や育児はどうしてもうまくできない。仕事ならできるから、仕事のほうをがんばりたい」と断ったそうです。何度頼んでも無理だと言うので、彼女は夫に不信感を抱くようになりました。
◇「家事は単なる労働、育児はレジャー」
父親たちは、家事にはいっそう消極的です。関西大学の大和礼子教授らの研究によると、父親たちには「子どもとは遊びたいが家事はできるだけしたくない」「家事はやっても報われない」「単なる労働」と考える傾向がみられました。
その一方で、母親たちは、家事をすることが「女らしい」というアイデンティティー獲得につながることもあって、家事を主体的にすることが多いといいます。もちろん、生まれつき女性のほうが家事が得意ということではありません。
父親たちが、家事よりも育児に積極的なのは、父親の主な役割は「稼ぐ」ことで、育児は「レジャー」ととらえる傾向があるからだと指摘されています。実際、父親たちが「育児」という言葉で語るとき、それはたいてい「世話」ではなく、子どもと「遊ぶ」ことを指すそうです。
父親の労働時間が比較的短い場合、子どもと「遊ぶ」回数は増えても、「世話」の回数は増えないことも報告されています。父親たちは時間的に余裕があっても、必ずしも食事の準備や洗濯、オムツ替えなどを多くするわけではないのです。
男性の育児参加が出生割合に影響することが知られています。スウェーデンやフランス、アメリカなどの出生率の高い国では、父親が子どもの「世話」を行う割合も日本よりずっと高いのです(牧野カツコほか『国際比較にみる世界の家族と子育て』2010年)。
日本の父親がより積極的に育児に参加するために、労働時間以外に何を変えればいいのでしょうか。
(毎日新聞)
男性が育児に協力的でないことが、少子化に影響しているのだろうか。
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