本作は、黒人同士の銃暴力が過激化する米シカゴを舞台に、女性たちが争いの終結を求めてセックス・ストライキを行うというもの。古代ギリシャの喜劇「女の平和」を現代風にアレンジした作品で、アンジェラ・バセット、サミュエル・L・ジャクソン、ウェズリー・スナイプスなどが出演している。タイトルはシカゴとイラクを合わせた造語。
古代ギリシャの喜劇「女の平和」を現代版として描いたことについて「今作の脚本家ケヴィン・ウィルモットが6年前に『ガット・トゥ・ギブ・イット・アップ』という脚本を書いたが、その時は企画倒れに終わった。だが昨年製作に再トライするために、脚本内の主要な構成を改稿し、あまり都会ではないシカゴ南部を舞台にし、さらにタイトルも『Chi-Raq』に変えた。現代のシカゴを描くというよりは、むしろ現代のアメリカを描いているつもりで、それが重要だ。今作では、古代ギリシャ喜劇『女の平和』に描かれた、停戦させるためのセックス・ストライキを取り入れている」と明かした。
風刺映画なため自由に描けたのではないか、との質問に「自由に描けるのが風刺映画だ。今作をドキュメンタリー映画にしたり、シカゴ南部をそのまま描いたりするつもりはなかった。もっとも、これがシリアスな題材を扱った初めての風刺映画ではない。僕が好きなスタンリー・キューブリック監督の映画『博士の異常な愛情』は、核戦争を描いた最もシリアスな作品だが、それでもあの映画はとても笑えた。シリアスな題材でも風刺映画として描けるんだ」と自信をのぞかせた。
製作理由について「今作が我々の命を助けてくれると思っている。シカゴには、『Purpose Over Pain』という銃で子供を失った親の慈善団体があって、映画内では彼らが俳優としてではなく、失った子供の写真を掲げた自分自身として出演している。そのため、風刺映画として描いているからといって、失われた子供たちの命を軽々しくつづってはいない。人々から風刺やジョークとして描いていると指摘されることに飽き飽きしている」と苦言を呈した。
本作は12月4日から一部の映画館で限定公開され、さらにアマゾン・プライム会員向けにストリーミング配信されている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)
(シネマトゥデイ)
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