初球だった。0―2の3回2死一塁。日本ハム・大谷が菊池が内角に投じた143キロ直球を強振する。打球はあっという間に右翼フェンスに到達した。本塁を狙った一塁走者・西川は本塁憤死したが、火を噴くような当たりに4万1138人の大観衆もどよめいた。
「先輩だけど、そこまで過剰な意識はしていなかった」。母校・花巻東の3年先輩との対決にも頭は冷静だった。初回はスライダーで空振り三振を喫したが、続く打席で雪辱。6回1死で迎えた3打席目も同じ内角の146キロ直球を右前に運んだ。「それでもいい投手だと思った」と先輩を持ち上げつつ、初対戦で2打席連続三振した13年以来の対戦で初めて打った。しかも2安打に「(打席での)見え方は全く違った。全く歯が立たないということはなかった」と手応えを口にした。
14年1月初旬。プロ1年目を終えて初めて迎えたオフ。母校・花巻東での自主トレで菊池と鉢合わせた。前年3月30日西武戦(西武ドーム)で迎えたプロ初対戦は2打席ともスライダーで空振り三振を喫した。その菊池に「次はチェンジアップで抑えるぞ」と声を掛けられ「絶対、打ちます」と返した。菊池は憧れの存在だが、負けず嫌いの大谷らしい返答だった。打ち返した球種は直球。約束とは違ったが、「打者・大谷」の成長を開幕戦で証明した。
試合前にはブルペンで約30球。右足首痛で本格投球は1月22日以来68日ぶりで、投手復帰へ向け本格的な再スタートも切った。1打席目は右足首に自打球を当て、ひやりとさせたが大事には至らず、バックネット裏から観戦した母・加代子さん(53)は「雄星くんが打たせてくれたのかな」とほほ笑んだ。試合には負けたが、菊池先輩との勝負には勝った。 (柳原 直之)
(スポニチアネックス)
西川の本塁憤死でなければ、流れが変わっていたかもしれない。
有原は、開幕の重圧に飲まれてしまったか。
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