井上氏は協議後、記者団に「外食も含めて協議した」と説明。「加工食品まで含めるということは基本的に合意している」と語った。与党は12日夕に東京都内で協議を再開し、同日中の正式決着を目指す。
自民党が外食までの拡大を提案したのは、調理した持ち帰り食品など、外食か加工食品かの判断が難しいケースが少なくないためだ。同党では従来、「外食を加えたすべての食料品としたほうが、麻生太郎財務相が国会で答弁しやすい」(税調幹部)との見方が出ていた。
政府関係者によると、自民党は協議で「外食を除くと、実務上の観点から制度の運用が難しくなる」として、財政規律よりも線引きの分かりやすさを重視するよう主張。公明党も理解を示し、いったんは対象を外食まで拡大する方向でまとまりかけた。
ただ、外食まで対象を拡大すれば、加工食品よりさらに3000億円の財源が必要だ。安倍晋三首相は「安定財源の確保」を指示したが、財源確保の見通しは立っていない。このため論議を主導する首相官邸や財務省から自公両党に「財政再建の支障になりかねない」との懸念が伝えられ、結論は持ち越された。
野党は軽減税率の対象拡大を「ばらまき」(民主党の長妻昭代表代行)などと批判しており、政府内にも「外食全部となれば高級料亭も軽減対象となり、国民の納得が得られない」(官邸関係者)との懸念が出ている。複数の政府高官は11日夜、外食を除いた1兆円規模で決着するとの見通しを示した。
一方、政府・与党は1兆円規模の財源確保に向け、低所得者対策の実施を見送って工面する4000億円に加え、数千億円程度のたばこ増税の検討に入った。正式には来年末の17年度税制改正で検討するが、たばこ1本で3円引き上げる案が浮上している。
自民、公明両党は16年度与党税制改正大綱を10日前後にまとめる予定だったが、軽減税率協議の難航で14日以降にずれ込む。
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軽減税率の対象を巡り、自公ですでに合意済みの加工食品を含む食料品(酒類を除く)に、外食を加えるべきだとする案が自民党内から出ているのは、加工食品と外食を明確に区別することが難しいためだ。しかし、外食まで対象を広げると必要財源は1兆円から1.3兆円に膨らむことから、財源の確保はより難しくなるとのジレンマがあり、最終局面で結論が持ち越される要因になっている。【朝日弘行】
自公の協議では、軽減税率導入後の混乱を避けるために、対象品目の線引きの分かりやすさが大きな課題となっていた。「生活必需品ではない」との判断から除外された酒類については、酒税法で定義されており、他の飲料とはっきり区別できる。しかし、財務省によると「外食」には法律上の定義がないため、品目によっては区別が難しい。
例えば、ハンバーガーを店内で食べる場合は「外食」となりそうだが、持ち帰りの場合は「外食」なのか「加工食品」なのかは微妙だ。海外では「持ち帰り」として軽減税率で購入した客が、店内で食べる不正も起きているという。そばの出前や宅配のピザ、コンビニエンスストアの店内で食べる「イートインスペース」の扱いなど、一つ一つの事例を区別するには、週明けにも決定する税制改正大綱までに時間が足りないのが実情だ。
一方で、対象を外食まで広げれば、線引きは明確になる。しかし、問題となるのは1.3兆円の財源の工面だ。政府・与党は、消費増税に伴う低所得者対策として医療・介護・保育などの自己負担総額に上限を設ける「総合合算制度」の導入を見送り、それによって浮く4000億円を充てる方針を既に決めている。それ以外に財源のメドはたっておらず、必要財源が1兆円としても不足額は6000億円に上る。
公明党は今後の景気の回復によって見込まれる税収の上振れ分のほか、たばこ税の増税で財源を確保することを求めている。だが、1本当たり3円のたばこ増税を実施しても、3000億円程度しか賄えない見通しで、税収の上振れも景気動向次第でいくら確保できるかは不透明だ。麻生太郎財務相は11日の記者会見で「安定財源がない限りはこういったことには応じられない」と、外食を含む食料品全般への軽減税率適用をけん制した。
自公はこれまでの軽減税率を巡る協議で、財源の工面を国の借金である赤字国債に頼らない方針を確認している。1.3兆円の財源確保のハードルは高く、線引きの分かりやすさを優先させるために外食を対象に含めるかどうかは自民党や政府内でも意見が割れている。
(毎日新聞)
景気低迷で増税時期の再延長のウワサもあるが、軽減税率実施で、前回のような景気の落ち込みを回避できるか。
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