ユニホームからスーツに着替え、木佐貫氏が新たな道を歩き始める。この日は都内のホテルで母校・亜大のパーティーに出席。同じくOBの巨人・井端内野守備走塁コーチと壇上に上がり「今後はまた違う場所で働きますが、(練習のきつかった)大学の時のことを思い出して頑張りたいです」とあいさつ。古巣・巨人のスカウトとして第二の人生をスタートさせることになった。
02年ドラフト自由枠で巨人に入団し、1年目の03年に10勝を挙げて新人王に輝いた。その年の11月、アテネ五輪のアジア予選では、高橋監督や上原(現Rソックス)、二岡(現巨人2軍打撃コーチ)とともに長嶋JAPANに選ばれた。ドラフト自由枠で入団し、日の丸に袖を通した人物が、引退即、スカウトになるのは極めて異例だ。
不慣れな世界への転身だが、成功するのは間違いない。新人王獲得、日本代表経験、そしてオリックス時代の10年には自身3度目の10勝を挙げ、日本ハムでも先発ローテを守るなど通算62勝をマークし、知名度は抜群。さらにこの日、約500人が出席したパーティーでも分かるように、創部58年目を迎えるアマチュア球界でも影響力の大きい、母校・亜大野球部の情報網も強い味方になる。
プロとしての目も間違いがない。巨人時代は中継ぎ、抑えも経験。2軍暮らしした時期もあるだけに、様々な選手を見てきた。投手はもちろん、野手であっても、巨人で成功する条件を満たした選手を見分ける力も備えている。
一方、スカウトはなかなか日の当たらない仕事で、まして現役時代、スポットライトを浴びた選手ほどなかなか務まらないが、巨人サイドは木佐貫氏の真面目さなら問題ない、と判断したのだろう。現役時代、練習で手を抜いたことはなく、事あるごとに気になることをメモするなど、マメだった。現在はパソコン教室に通い、表計算ソフトの使い方を学ぶなど、地道な活動を続けるための努力も惜しまない。
09年オフにトレードでオリックスに移籍するまで7シーズンを由伸監督と戦った。巨人在籍時に「由伸さんは、巨人の中でもスーパースターで特別な存在。恐れ多いです」と話す存在を、今後は陰からサポートする。チームは今季、マイコラスが13勝、菅野が10勝したが杉内の離脱や内海の不調もあって2ケタ勝利は2人だけ。9勝した高木勇、3勝の田口ら若い力も伸びているが、即戦力投手である“木佐貫2世”の獲得は急務。生真面目男が、誠心誠意で新戦力を発掘する日も近い。
◆木佐貫 洋(きさぬき・ひろし)1980年5月17日、鹿児島県生まれ。35歳。川内高から亜大に進学し、エースとして活躍。02年自由獲得枠で巨人入団。1年目の03年に10勝7敗で新人王。07年に12勝(9敗)を挙げ、リーグ優勝に貢献。10年からオリックスに移籍し、13年1月に糸井、八木とのトレードで赤田、大引とともに日本ハム入り。今季限りで現役引退した。通算成績は215試合で62勝72敗10セーブ。防御率3・76。188センチ、84キロ。右投右打。
(スポーツ報知)
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