今季の前半まで米大リーグを取材していたため、今でも自分のメールアドレスには各球団からのプレスリリースが届く。年末のこの時期になると、それらに混じって“クリスマスメール”も送られてくる。
今季は動画付きのメールを送ってくれる球団が多い。だが、どこの球団も「Merry Christmas」という表現を使っていない。代わりに「Happy holidays」とか「Season’s Greetings(季節のごあいさつ)」という表現が使われている。
マーリンズの場合、メールに添付された動画を再生すると、マッティングリー新監督とスタントンら主力選手たちからのメッセージが流れるのだが、ここでも皆「Happy holiday season and happy new year」といっている。バックではしっかりクリスマスソングが流れているのだが、誰ひとり「Merry Christmas」とはいわない。
クリスマスはあくまでキリスト教の祝日であって、その習慣を他宗教の人に押しつけるのはよくないという考え方が近年、米国では主流になってきているからだという。個人レベルではよくても、公の場で「Merry Christmas」と表現するのは、ポリティカル・コレクトネス(政治的な中立・公正)に反するのだそうだ。
年末には、ユダヤ系の人たちは「ハヌカ」、アフリカ系の人たちは「クワンザ」という祝日を祝うし、年末年始は宗教に関係なく休日になる人がほとんどなので、「Happy holidays」という表現なら、当たり障りがない。公的機関の装飾、大手企業の広告など、あらゆる場所で「Merry Christmas」という表現は、「Happy holidays」に置き換えられた。
日本ではこの時期、あちこちでメリークリスマスという表現がみられるが、これはわれわれ日本人が、クリスマスを宗教的な色が薄い“イベント”としてとらえているからこそなのだ。
クリスマスの表現ひとつでも、日米の考え方に違いが出てくる。外国で生活するとなると、そのような考え方の違いに出くわすことは日常茶飯事だ。メジャーでプレーする日本人選手や、日本球界で戦う助っ人たちは、野球とは全く関係のないことも含めて、文化の違いに適応する力が求められているのだと改めて感じた。
(巨人担当・清水公和)
(サンケイスポーツ)
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