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2014年6月、ゆりあ嬢を「丸裸」にしたのは、東京国税局の「課税部・資料調査課」に所属する腕利きの調査官たちだった。
「組織名の『料』の偏に因んで『コメ』との隠語で呼ばれる彼らは、任意の調査で個人や法人の大口所得隠しを暴きます。その調査力は、強制調査ができる『マルサ』こと査察部を凌ぐとも言われる」
と、国税関係者。
「彼らは、彼女の銀行口座の出し入れを見て、07年から13年までの7年間で約2億4500万円の所得があったことを突き止めました。おまけに彼女は、毎年の確定申告を義務付けられている個人事業主であるにもかかわらず、その間に一度も申告を行っていなかった。その結果、『所得隠し』を指摘されたのです」
AV女優のギャラは、高くても1本100万円と言われている。彼女の出演本数は年間20本にも満たないのに、どうやってそんな大金を稼いだのか。
「実は、AV女優としての報酬は約4500万円分だけで、残りの約2億円は個人的に相手をした男性から得たものでした。彼女はそれを現金で受け取り、自分の銀行口座に入れていたのです」(同)
■「慰謝料」は非課税
人気AV嬢ともなれば、男への貢がせ方もお上手に違いない。
「これを『接待サービスへの対価』と見做した当局は、所得税に消費税、さらに無申告に対するペナルティとして重加算税と延滞税を加え、合計で約1億1500万円の追徴課税を課しました」(同)
彼女は、この処分を一度は受け入れたという。
ところが、程なくして態度が一変する。所轄の目黒税務署に「申述書」なる文書を提出し、こう反論したのである。
〈交際していた男性から確かに金銭の授受はありましたが私が決めた金額でもなく精神的、肉体的な慰謝料として頂いたもので自由恋愛の結果だとおもっております〉
さらに、「異議申し立て」まで行い、
〈特定の個人から結婚を条件に交際いたしましたが成就しなかったので慰謝料として金銭を受け取った〉
としたうえで、
〈大阪在住の医師〉
〈FX株取引会社〉
〈香港在住の不動産業者〉
〈NPO法人主宰者〉
から、それぞれ5000万円を受け取ったことを明かしたのだった。
その意図を、税理士の浦野広明氏が解説する。
「慰謝料は所得税法上、心身に受けた損害を賠償するものであって、新たな所得に勘定されないため、非課税となります。彼女は、税理士にそういう知恵をつけられたのでしょう」
実際、彼女は国税OBの税理士を代理人に立てていたのだが、先の国税関係者が呆れて言う。
「心身ともに傷ついた割には、7年で4人との婚約は変わり身が早すぎるし、そもそも婚約不履行に対する慰謝料の相場は50万~200万円。1人5000万円の支払いが『慰謝料』と認められるわけもなく、申し立ては却下されました」
改めて当時の経緯をゆりあ嬢に尋ねると、
「追徴課税は支払い終わり、税務調査も終わったと聞いております」(所属事務所)
と言うのみだが、
「ただし、延滞税がかさんだおかげで、当初よりも納税額が膨れ上がりました」(国税関係者)
金が敵の世の中である。
「ワイド特集 きょうびの寓話」より
「週刊新潮」2016年9月15日号 掲載
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